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関連審決 審判1991-632
無効2000-35274
関連ワード 技術的範囲 /  出願経過 /  禁反言 /  実施許諾 /  損害額 /  実施料相当額 /  権利濫用(権利の濫用) /  考案 /  図面 /  構造 /  補正 /  進歩性(3条2項) /  新規性(3条1項) /  公然実施 /  拒絶理由 /  実施許諾(実施の許諾) /  通常実施権 /  実施例 /  公知技術 /  特段の事情 /  頒布 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 361号 損害賠償請求事件
原告 株式会社ドムス設計事務所
原告訴訟代理人弁護士 上野勝
同補佐人弁理士 松永善蔵
被告 松下電工株式会社
被告訴訟代理人弁護士 小松 陽一郎
同訴訟復代理人弁護士 平野和宏
同 宇田浩康
同補佐人弁理士 川瀬幹夫
同 荒川伸夫
同 安藤淳二
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/09/09
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
被告は,原告に対し,1億1120万0120円及びこれに対する平成12年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,木質防振床材についての実用新案権を有する原告が,被告の製造・販売した製品が当該実用新案権の考案技術的範囲に属し,その製造・販売が原告の実用新案権を侵害するものであったとして,被告に対し,不当利得返還を求めている事案である。
1 前提事実(争いのない事実及び末尾掲記の証拠により認められる事実) (1) 原告は,建築資材の製造及び販売業務等を業とする株式会社である。
被告は,電器機械器具及びその他の化学工業製品の製造,販売,建築材料の製造並びに販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告は,木質防振床材について,次のような内容の実用新案権を有する(以下,「本件実用新案権」といい,その考案を「本件考案」という。)。
ア 実用新案登録番号 第2048015号 イ 登録年月日 平成7年1月23日 ウ 考案の名称 木質防振床材 エ 出願番号 実願平1-33755号 オ 出願年月日 昭和60年12月27日 カ 出願公告年月日 平成4年12月9日 (3) 本件実用新案権に係る明細書(補正後のもの。以下「本件明細書」という。)の「実用新案登録請求の範囲」の記載は次のとおりである(甲1)。
「任意の緩衝板上において,貫通あるいは半貫通のスリットが所定間隔で設けられた仕上板上に,合成樹脂シート等よりなり仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板を介在させて木質床化粧板が,順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化されたことを特徴とする木質防振床材。」 (4) 本件考案の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下「構成要件A」などという。) A 任意の緩衝板上において B 貫通あるいは半貫通のスリットが所定間隔で設けられた仕上板上に C 合成樹脂シート等よりなり,仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板を介在させて D 木質床化粧板が E 順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化されたことを特徴とする F 木質防振床材 (5) 被告は,次のとおり,木質防振床材を製造販売した(甲4の1)。
ア 商品名「木質直貼床材ウッディ40」(以下「被告製品(1)」という。)を平成4年1月20日から平成6年12月末日まで イ 商品名「木質直貼床材ウッディ45」(以下「被告製品(2)」という。)を平成4年6月18日から平成6年12月末日まで ウ 商品名「木質直貼床材ウッディ45D1」(以下「被告製品(3)」という。)を,平成5年9月6日から平成6年12月末日まで オ 商品名「木質直貼床材ウッディ45エース」(以下「被告製品(4)」という。)を平成3年2月7日から平成6年12月末日まで (6) 各被告製品の構成を本件考案の構成要件に対応する形で記載すると,次のとおりである(弁論の全趣旨。以下「被告製品(1)の構成a」などという。)。
ア 被告製品(1) a 特殊クッション材からなる緩衝材上において b 貫通あるいは半貫通のスリットが横方向に11ないし11.6mm間隔で設けられ,縦方向に2本設けられた溝入合板上に c 塩ビシートとゴム発泡体からなる制振シートを介在させて d ナラツキ板張化粧合板が e 貼着,一体化され,長さ895mm,幅141mm,総厚18.5mmに製品化されたことを特徴とする f 木質直貼床材 イ 被告製品(2) a 特殊クッション材からなる緩衝材上において b 貫通あるいは半貫通のスリットが横方向に60mm間隔で設けられ,縦方向に2本設けられた溝入合板上に c 制振シートを介在させて d ツキ板張化粧合板が e 貼着,一体化され,長さ1818mm,幅151.5mm,総厚17mmに製品化されたことを特徴とする f 木質直貼床材 ウ 被告製品(3) a 特殊クッション材からなる緩衝材上において b 貫通あるいは半貫通のスリットが横方向に60mm間隔で設けられ,縦方向に2本設けられた溝入合板上に c 制振シートを介在させて d ナラツキ板張化粧合板が e 貼着,一体化され,長さ1818mm,幅151.5mm,総厚18mmに製品化されたことを特徴とする f 木質直貼床材 エ 被告製品(4) a 特殊クッション材からなる緩衝材上において b 貫通あるいは半貫通のスリットが横方向に60mm間隔で設けられ,縦方向に2本設けられた溝入合板上に c 制振シートを介在させて d ナラツキ板張化粧合板が e 貼着,一体化され,長さ895mm,幅71mm,総厚14mmに製品化されたことを特徴とする f 木質直貼床材 (7) 被告製品(1)ないし(4)の構成a,d,e及びfは,それぞれ,構成要件A,D,E及びFを充足する(弁論の全趣旨)。 (8) 各被告製品の構成層の厚さについて 被告は,各被告製品の販売に先だって,財団法人日本建築総合試験所に各被告製品の品質検査を依頼し,同検査の成績表に,同財団法人による各被告製品の構成層の厚さ測定結果が記載された(乙2の1ないし4。以下,同検査による測定結果を「品質検査測定結果」という。)。
品質検査測定結果によれば,各被告製品の構成層の厚さは,次の表のとおりである。
被告は,各被告製品ごとに,床衝撃音レベル推定値,断面図,色の種類などを記載したサンプル帖を作成し,顧客からの依頼に応じて,各被告製品のサンプル(以下「カットサンプル」という。)と共に顧客に送付するなどのサービスを実施しており,原告は,平成6年ころ各被告製品のカットサンプルを入手し,平成12年ころ,武蔵工業大学音響情報研究室に依頼して,同カットサンプルの構成層の厚さを測定した(以下,同測定による測定結果を「カットサンプル測定結果」という。)。
カットサンプル測定結果によれば,各被告製品の構成層の厚さの平均は,次の表のとおりである。
なお,上記測定結果の報告書には,「ひび割れ,接合面の剥離などのために,部材境界面が不明確な試料があった。断面の凹凸によってルーペが密着できず,部材境界面が不明確,また視差による誤差が含まれる試料もある。」旨の記載がある(甲10ないし14。いずれも枝番を含む。)。
本訴提起後の平成12年11月,原告は,上記と同じ各カットサンプルの構成層の厚さを,自ら測定し,測定結果を甲17号証として提出した(以下,同測定による測定結果を「原告測定結果」という。)。
原告測定結果によれば,各被告製品の構成層の厚さの平均は,次の表のとおりである。
2 争点 (1) 各被告製品の構成(争点1) (2) 各被告製品が構成要件Bを充足するか(争点2)。
(3) 各被告製品が構成要件Cを充足するか(争点3) (4) 本件実用新案権は無効事由を有することが明らかであって,原告の本訴請求は権利濫用として許されないか(争点4)。
(5) 原告の損害(争点5)。
争点に関する当事者の主張
1 争点1(各被告製品の構成)について (原告) (1) 被告製品(1)について 被告製品(1)の制振シートは,ゴム発泡体と塩ビシートの二層からなるが,ゴム発泡体のみで,本件考案の実施品と同様の遮音効果(遮音等級L-40)が得られるから,ゴム発泡体が本件考案の可撓性薄板に相当し,塩ビシートは可撓性薄板に付加された不必要な層というべきである。
(2) 各被告製品の各層の厚さについて 各被告製品の各層の厚さは,品質検査測定結果ではなく,カットサンプル測定結果ないし原告測定結果の平均値(被告製品の層の境界が不明確であり,測定場所によってばらつきが生じることが避けられないことから,測定値の平均値を被告製品の構成とすべきである。)に基づいて認定すべきである。
被告は,カットサンプルは不良品や端材であって市場流通品とは異なる旨主張するが,顧客に製品の購入を促すために作成するカットサンプルに不良品や端材を用いるとは考えられない。
これに対し,品質検査測定結果は,依頼者であるメーカーに試験成績書を送るだけで,その結果について依頼者の了解なく公表できない性質のものであり,また,品質検査の依頼時期,品質検査測定結果が出された時期及び被告が各被告製品を販売し始めた時期の時間的関係からして,市場流通品を試験体としているとは考えられないから,品質検査測定結果を,市場に流通している被告製品(1)ないし(4)の各層の厚さの認定資料として用いるべきではない。
(被告) (1) 被告製品(1)について 原告は,被告製品(1)の制振シートが,厚さ1mmの塩ビシートと厚さ1mmのゴム発泡体の二層からなるにもかかわらず,塩ビシートを不要なものと決めつけて,ゴム発泡体のみを比較の対象としており,不当である。
(2) 各被告製品の各層の厚さについて 各被告製品の各層の厚さは,品質検査測定結果に基づいて認定すべきである。
品質検査測定結果は,市場流通品の性能を確認するための試験結果であり,出荷前の量産品のロットから無作為に抽出した製品を対象としているから,市場に流通している被告製品と同等のものである。
原告は,カットサンプル測定結果ないし原告測定結果を用いるべきであると主張するが,カットサンプルは,製造段階で生じた不良品や端材を利用して作成されるものであり,市場流通品と同等のものではない。また,被告製品は,弾性のある素材で構成されており,保存状態によっては圧縮変形により寸法が変化するところ,原告の入手したカットサンプルの保存状態は不明である。のみならず,カットサンプル測定結果及び原告測定結果は,被告が正確性担保のため,事前に測定場所及び測定条件を開示するよう求めていたにもかかわらず,被告からの要請を容れることなくなされたものであり,また,同一の製品についても測定値にばらつきがあるなど,正確性が担保されていない。したがって,カットサンプル測定結果ないし原告測定結果を各被告製品の厚さの認定資料として用いるべきではない。
また,可撓性薄板は,経年変化によって厚みが減少することはあっても増加することはないところ,カットサンプル測定結果ないし原告測定結果は,品質検査測定結果の数値より少ないから,後者を採用すべきである。
仮に,カットサンプル測定結果ないし原告測定結果を用いる場合であっても,同様の理由から,実測値の平均値ではなく最大値をもって各被告製品の構成とすべきである。
2 争点2(各被告製品が構成要件Bを充足するか。) (原告) (1) 構成要件B「所定の間隔」の解釈 被告は,構成要件Bにいう「所定の間隔」の意義は明確でないとして,本件明細書考案の詳細な説明欄の記載を根拠に,「所定の間隔」を,スリットの幅が1ないし2mm,スリットとスリットの間隔が100ないし300mmの範囲に限定すべきであると主張する。
しかし,本件考案明細書には,次のアないしウのような記載があり,これらの記載を参照して最適な寸法を定めることができるから,「所定の間隔」の意義は明確に記載されているといえる。
ア 「スリットの作用で仕上板の共振現象による衝撃振動の増大,拡散が制限され」(4欄22行から23行) イ 「スリットで区画された仕上板が(中略)部分的で個別の自由振動を生じる」(4欄25行から28行) ウ 「仕上板の共振を防ぐためにスリットの間隔を狭くしたりする」(6欄12行から13行) (2) 各被告製品の構成要件Bの充足性 各被告製品は,いずれも仕上板に所定間隔でスリットが設けられているから,「スリットが所定間隔で設けられた仕上板」を有するといえる。
したがって,各被告製品は,構成要件Bを充足する。
(被告) (1) 構成要件B「所定の間隔」の解釈 構成要件Bにいう「所定の間隔」の意義は明確でないから,その意味は,本件明細書に記載された実施例に限定されるか,本件明細書考案の詳細な説明欄記載を斟酌してその意味を限定する必要がある。また,本件考案出願前に,積層貼着された床材の仕上板に間隔を限定することなくスリットを設ける公知技術として,実願昭50-107130号(実開昭52-21218号)のマイクロフィルム(乙29)及び特公昭56-23509号公報(乙30)が存在していたから,本件実用新案権の有効性を維持するためには,構成要件Bにいう「所定間隔」の意義は限定して解釈すべきである。
そして,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄には,スリットの間隔について,次のような記載があり,それ以外の記載はないから,原告は,「所定の間隔」の意味を,スリットの幅が1ないし2mm,スリットとスリットの間隔が100ないし300mmの範囲に意識的に限定していると解すべきである。
ア 「スリット4は,幅が1mmから2mm程度で,隣接するスリット4,4間の間隔が100mmから300mmであるのを標準とし,最適の寸法を定める」(5欄28行から30行) イ 「スリット4を,幅1mmで100mm間隔で設刻し」(6欄44行から7欄1行) (2) 各被告製品の構成要件Bの非充足性 各被告製品(1)ないし(4)の仕上板に施された溝の間隔は,それぞれ,11ないし11.6mm,60mm,60mm,60mmであって,100ないし300mmではないから,被告製品は,いずれも「スリットが所定間隔で設けられた仕上板」を有していない。
したがって,各被告製品は,構成要件Bを充足しない。
3 争点3(各被告製品が構成要件Cを充足するか) (原告) (1) 構成要件C「多分に薄目」の解釈 被告は,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄における実施例の記載を根拠に,「多分に薄目」を実施例の寸法に限定して解すべきである旨主張するが,実施例記載の寸法は,一実施例にすぎず,実用新案登録請求の範囲を限定するものではない。
また,被告は,原告が,「『多分に薄目』とは具体的にはどの範囲の寸法を表すのか,考案の詳細な説明中に示されていない。寸法の範囲とその根拠を示す必要がある。」との平成4年4月28日付尋問書に対し,平成4年7月10日付回答書(乙4)において,「特願昭60-298268号の出願当時の明細書第8頁第3〜5行において『仕上板3上の可撓性樹脂シート5は厚さ1mmであった。』との記載による。」(14頁14ないし21行),「最上層の木質床化粧板は,6mm前後のものが用いられることは,当業界の技術として通例のこと」(15頁5ないし7行)と記載し,上記実施例の記載を指摘したことを根拠に,原告が,本件考案の実用新案登録請求の範囲を,木質床化粧板の厚さ6に対し可撓性薄板の厚さを1とする構成に限定したと主張する。
しかし,上記回答は,多分に薄目の可撓性薄板が仕上板の共振を制限し,最下層の任意の緩衝板と相俟って衝撃振動の増大と拡散を防止するという可撓性薄板の技術的意義を明らかにしたものであって可撓性薄板の厚さを限定したものではない。
平成2年10月15日に,報告結果が出された「床衝撃音レベル試験報告書」(甲15。原告と後に本件実用新案権の通常実施権者となる積水樹脂株式会社との共同開発に対する試験報告である。)において試験体とされた製品は,本件実用新案権の実施品の一つであるが,その構成は,最上層2.5mm,2層目0.8mm,3層目5.5mm,最下層5.2mmとなっており,最上層と2層目の比率は,6対1ではない。
(2) 各被告製品の構成要件Cの充足性 各被告製品の構成は,前記のとおり,化粧板の厚さが2.1ないし2.2mm,2.8ないし3.0mm,3.5ないし3.7mm,2.8mm,制振シートの厚さが1mm,0.4ないし0.7mm,0.5ないし0.8mm,0.3ないし0.8mm,溝入合板の厚さが9mm,9.0ないし9.2mm,9.0ないし9.2mm,8.5mm,5.5ないし6.0mmである。
したがって,制振シートの厚さは溝入合板及び化粧板より多分に薄目であるから,各被告製品は構成要件Cを充足する。
(被告) (1) 構成要件C「多分に薄目」の解釈 本件明細書の「実用新案登録請求の範囲」には,「多分に薄目の可撓性薄板」と記載されているが,「多分に薄目」の意義は不明確であるから,その意味は,明細書に記載された実施例に限定されるか,明細書考案の詳細な説明,公知技術又は出願経過を斟酌してその意味を限定する必要がある。また,本件考案出願当時,木質床化粧板(ブナ材ブロック),可撓性薄板(制振シート),仕上板(合板)の厚さの比が,11対2対5である三層構造の床板(昭和60年11月21日に頒布された刊行物であるテキスト「試作遮音床板の性能試験(U)」の表1-1No19。別紙1O)が公知技術として存在していたから,本件実用新案権の有効性を維持するためには「多分に薄目」の構成要件を限定して解釈しなければならない。
そして,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄には,実施例として次のアの記載があり,原告は,本件考案の拒絶査定に対する不服審判事件(平成3年審判第632号)において,特許庁の次のイのような問いに対し,ウのような回答をしているものであり,原告は,本件考案において,「多分に薄目」の意味を,仕上板の厚さ9,木質床化粧板の厚さ6に対して可撓性薄板厚さ1程度とすることによって拒絶査定を免れているのであるから,「多分に薄目」の意義を限定して解すべきである。
原告が,本件訴訟で,上記限定に反するような主張をすることは禁反言の原則から許されない。
ア 「第5図は,緩衝板1の厚さが10mmの場合の例で,第6図は緩衝板1の厚さが25mmの場合の例である。その他の仕様は第5図,第6図共通で仕上板3の厚さ9mmの合板上に…弾性ある可撓性合成樹脂シート5の厚さを1mm木質床化粧板6の厚さを6mmとした。」(6欄40行から7欄3行) イ 「実用新案登録請求の範囲に記載の『多分に薄目』とは具体的にはどの範囲の寸法を表わすのか,考案の詳細な説明中に示されていない。寸法の範囲とその根拠を示す必要がある。」(平成4年4月28日付尋問書。乙3) ウ 「特願昭60-298268号の出願当時の明細書第8頁第3〜5行において『仕上板3上の可撓性樹脂シート5は厚さ1mmであった。』との記載による。」,「最上層の木質床化粧板は,6mm前後のものが用いられることは,当業界の技術として通例のことであり」と記載する他,寸法の範囲とそ根拠として上記ア記載の実施例を指摘する(同年7月10日付回答書。乙4) (2) 各被告製品の構成要件Cの非充足性 被告製品(1)ないし(4)の化粧板の厚さは,2mm,2.8mm,3.5mm,2.8mm,制振シートの厚さは,被告製品(1)が2mm,被告製品(2)ないし(4)がいずれも1mmであり,被告製品(1)においては,化粧板と制振シートの厚さが等しく,被告製品(2)ないし(4)の木質化粧合板と制振シートの厚さの比は,それぞれ1対2.8,1対3.5,1対2.8であり,1対6程度ではないから,いずれも制振シートの厚さが木質床化粧板の厚さより「多分に薄目」であるということはできない。なお,各被告製品の構成が原告の主張どおりであったとしても同様である。
したがって,各被告製品は,構成要件Cを充足しない。
4 争点4(本件実用新案権が無効事由を有することが明らかといえるか) (1) 本件考案の出願日について (被告) ア 本件考案の出願経緯について 本件考案は,昭和60年12月27日に特許出願(以下「原出願」という。)がなされた後,平成元年3月24日に実用新案の変更出願(以下「本件変更出願」という。)がなされたが,原出願願書添付の明細書の記載内容と本件変更出願時の願書添付の明細書の記載内容との間には,次の(ア)の相違点がある。
また,本件考案は,平成3年2月9日に変更出願願書添付の明細書の記載の補正(以下「本件補正」という。)が行われ,これによって本件明細書の記載内容となったが,本件変更出願時の願書添付の明細書の記載内容と本件補正後の本件明細書の記載内容との間には,次の(イ)及び(ウ)の相違点がある(以下「変更(ア)」などという。)。
(ア) 考案の詳細な説明欄において,「アスファルト紙,樹脂シート等の可撓性薄板」(明細書5頁2ないし3行)の記載が,「弾性ある可撓性薄板」(明細書5頁8行)と変更された。
(イ) 実用新案登録請求の範囲欄において,「仕上板上に樹脂シート等よりなる可撓性薄板が貼着され」との記載が,「仕上板上に,合成樹脂シート等よりなり,仕上板および最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板を介在させて」との記載に変更された。
(ウ) 実用新案登録請求の範囲欄において,「可撓性薄板上に木質床化粧板が配設されたことを特徴とする木質防振床材」との記載が,「可撓性薄板を介在させて木質床化粧板が,順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化されたことを特徴とする木質防振床材」と変更された。
イ 変更(ア)ないし(ウ)の評価について 変更出願において,原出願願書添付の明細書又は図面の記載が変更された場合,当該変更が,原出願願書添付の明細書又は図面に記載されていない事項であった場合には,当該事項が,当業者にとって自明であるなどの事情がない限り,出願内容の同一性に変更があるというべきである。
また,明細書補正について,補正部分が新たな構成の付加である場合には,当該付加部分が,当業者にとって自明な構成であるとか本件考案にとって技術的に無意味な構成であることが明らかであるなどの特段の事情が認められない限り,当該補正は,明細書の要旨の変更に当たるというべきである。
そして,次のとおり,変更(ア)ないし(ウ)は,いずれも出願内容の変更にあたり,変更(イ)は,明細書の要旨の変更に当たる。
(ア) 変更(ア)について 「アスファルト紙」は弾性のあるものではなく,「樹脂シート」も必ずしも弾性があるとはいえないから,これらを「弾性ある可撓性薄板」と変更した変更(ア)は,原出願願書添付の明細書又は図面に記載されていない事項の付加である。また,アスファルト紙ないし樹脂シートが弾性を有することが,当業者にとって自明であるということはできない。
なお,プラスチック系材料のヤング率が1×104〜1×109 (N/m2)である旨記載した文献(甲18中の「建築設計資料集成」)があるが,いかなるヤング率であれば弾性があるといい得るか明確でないし,原出願願書添付の明細書にはアスファルト紙や樹脂シートのヤング率は記載されておらず,アスファルト紙や樹脂シートが,上記のようなヤング率であることが,当業者にとって自明であったということもできない。
したがって,変更(ア)は,出願内容の変更に当たる。
(イ) 変更(イ)について 原出願願書添付の明細書及び変更出願時の出願書添付の明細書中には,可撓性薄板が木質化粧板及び仕上板よりも薄いことをうかがわせる記載はないから,変更(イ)によって層の厚さの関係という補正前の明細書又は図面に記載されていない新たな考案の構成を付加したことになる。
そして,原出願当時ないし変更出願時,可撓性薄板が仕上板及び木質床化粧板よりも多分に薄目であることが自明であるということはなく,上記新たに付加された構成は,床衝撃音の吸振,遮断のうちリバウンドによる衝撃振動増幅の抑制という原特許出願に係る発明にはなかった課題の克服を図る上で不可欠の構成要素であるから,本件補正は,出願内容の変更にあたるとともに,明細書の要旨の変更に当たる。
(ウ) 変更(ウ)について 原出願願書添付の明細書中の「発明の詳細な説明」欄には,「床基台の上に緩衝板を敷設し,その上に仕上板を密設し,この仕上板の上の表面上に可撓性薄板を貼着することにより構成した防振床が記載され,仕上板の表裏には予め可撓性薄板と緩衝板を密着しておくことも可能である」旨が記載されているだけで,木質床化粧板をも積層貼着することや所定の形状,寸法に一体化された木質床材とすることは記載されていない。この点について,本件考案の登録異議決定(甲19)は,「床基台の上に緩衝板を敷設し,その上に仕上板を密設し,この仕上板の上に可撓性薄板を貼着することにより構成した防振床が記載され,仕上げ板の表裏に予め可撓性薄板と緩衝板を密着しておくことも可能である」旨の記載が,床構造と防振床の両方を含む上位概念である「防振構造」についての記載であると認定しているが,かかる認定は,まさに,「防振構造」という明細書に記載のない上位概念を媒介に「床構造」と「防振材(床材)」を同義とするものであって不当である。
そして,防振床材において,各層を所定の形状,寸法に一体化することが当業者にとって自明の事項であったということはできない。
したがって,変更(ウ)は,出願内容の変更に当たる。
ウ 本件考案の出願日について (ア) 出願日平成3年2月9日との主張(明細書の要旨変更による実用新案登録出願日) 本件補正においてなされた変更(イ)は,上記のとおり明細書の要旨の変更に当たるから,本件考案は,平成3年2月9日に出願したものとみなされる(平成5年法律第26号による改正前の実用新案法(以下「改正前実用新案法」という。)9条1項,平成5年法律第26号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)40条)。
(イ) 出願日平成元年3月24日との主張(出願変更の要件欠缺による出願日不遡及) 仮に,変更(イ)が明細書の要旨の変更に当たらなかったとしても,平成元年3月24日の変更出願の際にした変更(ア),平成3年2月9日にした変更(イ)及び(ウ)は,上記のとおり出願内容の変更に当たるから,本件変更出願は,出願変更の要件を欠き,出願日遡及(改正前実用新案法8条1項,3項)が適用されない結果,本件考案の出願日は平成元年3月24日となる。
(原告) ア 変更(ア)ないし(ウ)の評価について 次のとおり,被告の指摘する変更(ア)ないし(ウ)は,いずれも出願内容の変更に当たらず,変更(イ)は,明細書の要旨の変更に当たらない。
(ア) 変更(ア)について 「弾性」は,弾性係数ヤング率によって示されるところ,原出願願書添付の明細書に記載された可撓性薄板の部材であるプラスチック系材料のヤング率は1×104〜1×109 (N/m2)であるから,原出願願書添付の明細書において,可撓性薄板が「弾性」を有することが記載されていたといえる。
(イ) 変更(イ)について 原出願の特許請求の範囲には可撓性薄板の寸法についての記載はないが,明細書中に本件考案の作用効果を示す試験体の厚さ寸法が記載され,平成2年9月8日付意見書において1mm程度の厚さの可撓性薄板の作用効果について記載しているから,補正を行った平成3年2月9日時点では,発明内容の変更に当たらず,明細書の要旨の変更に当たらない。
(ウ) 変更(ウ)について 原出願願書添付の明細書中の,「床基台の上に緩衝板を敷設し,その上に仕上板を密設し,この仕上板の上の表面上に可撓性薄板を貼着することにより構成した防振床が記載され,仕上げ板の表裏には予め可撓性薄板と緩衝板を密着しておくことも可能である」旨の記載は,現場で各構成部材を順次施工する「乾式防振床構造」とあらかじめ各構成部材を積層貼着しておく工法の両方を含む概念であるから,原出願の明細書に,各構成部材が「積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化された木質防振床材」が記載されていないということはできない。
イ 本件考案の出願日について (ア) 出願日平成3年2月9日との主張について 上記のとおり,変更(イ)は明細書の要旨の変更に当たらないから,改正前実用新案法9条1項,改正前特許法40条によって,出願日が平成3年2月9日に変更されることはない。
(イ) 出願日平成元年3月24日との主張について 上記のとおり,変更(ア)及び(ウ)は,出願内容の変更に当たらないから,改正前実用新案法8条1項,3項が適用される結果,本件考案の出願日は昭和60年12月27日となる。
(2) 無効事由の有無について (被告) ア 出願日が平成3年2月9日の場合 (ア) 実用新案法3条1項3号違反 平成3年2月9日より前に日本国内において頒布された刊行物である別紙1@ないしHに,本件考案と同一構成からなる防振床材が記載されているから,本件考案は,平成11年法律第41号による改正前の実用新案法3条1項3号(以下,3条1項2号,3号については同様である。)に違反して登録されたものであって,同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
(イ) 実用新案法3条1項2号違反 別紙1I及びJによれば,本件考案は,日本国内において公然実施されたものであるといえるから,実用新案法3条1項2号に違反して登録されたものであって,同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
(ウ) 実用新案法3条2項違反 @ 当時の技術水準が別紙1KないしNであったことを考えると,本件考案は,当業者が,出願日前に,別紙1Oの考案に同P及びQのスリット構造を組み合せることによって,極めて容易に考案することができたものであるから,実用新案法3条2項に違反して登録されたものであって同法37条1項2号の無効事由を有する。
A 当時の技術水準が別紙1C,D,H,I,M及びNであったとことを考えると,平成元年3月24日当時,木質防振床材において仕上げ板に所定間隔で溝を設け,各層を所定の形状,寸法に一体化することは既に公知であったといえるから,本件考案は,当業者が,出願日前に,別紙1Cの考案に基づいて,極めて容易に考案することができたものであるから,実用新案法3条2項に違反して登録されたものであって同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
B 当時の技術水準が別紙1@,A,KないしNであったことを考えると,本件考案は,出願前に同Hの発明に基づいて極めて容易に考案することができたものであるから,実用新案法3条2項に違反して登録されたものであって同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
イ 出願日が平成元年3月24日の場合 (ア) 実用新案法3条1項3号違反 平成元年3月24日より前に日本国内において頒布された刊行物である別紙1@ないしDに,本件考案と同一構成からなる防振床材が記載されているから,本件考案は,実用新案法3条1項3号に違反して登録されたものであって,同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
(イ) 実用新案法3条2項違反 @ 当時の技術水準が別紙1C,D,H,I,M及びNであったとことを考えると,平成元年3月24日当時,木質防振床材において仕上げ板に所定間隔で溝を設け,各層を所定の形状,寸法に一体化することは既に公知であったといえるから,本件考案は,当業者が,出願日前に,別紙1Cの考案に基づいて,極めて容易に考案することができたものであり,実用新案法3条2項に違反して登録されたものであって同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
A 当時の技術水準が別紙1@,A,KないしNであったことを考えると,本件考案は,出願前に同Hの発明に基づいて極めて容易に考案することができたものであるから,実用新案法3条2項に違反して登録されたものであって同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
ウ 出願日が昭和60年12月27日の場合 仮に,本件考案の出願日が原告主張のとおり昭和60年12月27日に遡及するとしても,当時の技術水準が別紙1KないしNであったことを考えると,本件考案は,当業者が,出願日前に,別紙1Oの考案にP及びQのスリット構造を組み合せることによって,極めて容易に考案することができたものであるから,実用新案法3条2項に違反して登録されたものであって同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
なお,別紙1Oのテキストは,異議申立審判において,発表場所及び発表日時が特定できない旨の判断がなされたが,本件訴訟において提出された証拠(乙13ないし19,21,22,26。いずれも枝番を含む。)によれば,昭和60年11月21日に,東京都江東区深川2丁目5番11号で開催された「遮音性を付加した床板の開発」発表研究会において参加者に配付された刊行物であることが明らかである。
(原告) 本件考案の出願日が昭和60年12月27日となることは前記のとおりであるから,被告の主張する刊行物や実施例のうち,昭和60年12月27日以降のものは,本件考案の出願日以降のものであり,実用新案法3条1項2号,3号,同条2項に該当しない。
被告の主張中,昭和60年12月27日より前の引用例に基づく主張は,別紙1Oのテキストに基づく容易推考のみであるが,同テキスト表紙には,昭和60年11月21日の日付が記載されているものの,全頁にわたり頁数の記載がなく,発表研究会日程中の演題と研究論文の題目が相違するなど,実際に昭和60年11月21日に頒布されたものであるか不明である。被告が上記テキストの頒布日時証明のために提出した証明書は,同テキストの頒布から12ないし15年後に作成されたものであり,記載の不一致が存在するなど,瑕疵を多く含んだものであって信用できない。
また,仮に上記テキストの頒布日が昭和60年11月21日であったとしても,上記テキストは,会費を支払った参加者にのみ特定の日時場所に限って提供されたものであって,公刊されて公衆の自由な閲覧に供せられるものではなかったのであるから,上記テキストを実用新案法3条1項3号の「刊行物」ということはできない。
さらに,上記テキストが,昭和60年11月21日付で頒布され,実用新案法3条1項3号の刊行物に当たる場合であっても,同テキストには,仕上板にスリットが入っていないから,同テキストに本件考案が記載されていたということはできない。被告は,当時の技術水準として別紙1KないしNが存在し,上記テキスト記載の考案に,別紙1P及びQの考案又は発明を組み合せることによって,当業者は本件考案の技術を容易に考案できたと主張するが,KないしN,P及びQは次のとおりの考案ないし発明であって,これらを上記テキストと組み合せたり考慮したりしても当業者が本件考案の技術を極めて容易に考案し得たということはできない。
Kについて 中間の木質材にはスリットが存在していない。
Lについて 三層構造の床板であって,最下層に緩衝材もなく,板材にスリットも設けられていない。
Mについて 同考案は,凹凸のあるコンクリート床上になじみよく貼り付けられるように方形寄木板の継目に裏面から切溝を入れるというものであり,緩衝板や可撓性薄板の構成を有しない。
Nについて 同考案は,現場施工で一体化させるものであり,また,本件考案の可撓性薄板に相当する床パネルにはスリットがない。
Pについて 三層構造の建築の壁に用いるものである。
Qについて 弾力性を有する軟らかいシートを貼り付けた三層構造の現場作りの床仕上工法であるが,最上層に硬質の木材を配設しても本件考案と同様の作用効果を発揮するとの記載はなく,当時,当該発明によって,本件考案と同様の高度の床衝撃音防止効果が生じることは予想されていなかった。
5 争点5(原告の損害)について (原告) (1) 各被告製品の販売数量 ア 被告製品(1)について 甲5,6の直貼りフロアーの売上推移欄の売上量に被告製品(1)の売上比率を掛けて算出すると,被告製品(1)の平成5年度から平成7年度までの販売数量は,合計3万1865平方メートル(平成5年12月31日まで製造分が1万0014平方メートル,平成6年1月1日から同年12月31日まで製造分が1万8955平方メートル,その余が2896平方メートル)である。
イ 被告製品(2)ないし(4)について 平成4年12月から平成7年6月までの,被告の防音床材出荷実績は,65万5370平方メートルであり,同期間に,被告が販売していた被告製品(2)ないし(4)以外の防音床材(ウッディスーパー45,ウッディハイカラスーパー45。
いずれも平成6年以降に販売された。)の出荷実績は,合計28万2991平方メートルであったから,65万5370平方メートルから28万2991平方メートルを控除した37万2379平方メートルが同期間の被告製品(2)ないし(4)の売上数量と考えられる。
また,乙33によれば,平成7年7月から平成8年10月の間の被告製品(2)ないし(4)の売上数量は,871平方メートル,平成8年11月から平成9年5月までの被告製品(2)ないし(4)の売上数量は,約81平方メートルである。ただし,平成8年11月から平成9年5月までの間は,原告は,本件実用新案権につき共有者として3分の1の持分しか有していなかったことから,同期間の売上数量のうち,原告が実施料相当額の算定の基礎にできるのは,81平方メートルの3分の1に相当する27平方メートルである。
以上より,平成4年12月から平成9年5月まで間の売上数量のうち,原告が実施料相当額算定の基礎とし得るものは,37万2379平方メートル,871平方メートル,27平方メートルの合計である37万3277平方メートルである。
(2) 実施料率について ア 被告製品(1)について 原告は,昭和62年5月30日に,ボード株式会社との間で,本件考案につき,一時金500万円,1平方メートル当たり180円で契約を締結し,平成6年12月1日,積水樹脂株式会社との間で,一時金700万円,実施料1平方メートル当たり200円で契約締結しており,その他,本件考案について,1平方メートル当たり235円で和解したことがあることから,本件考案の実施料率としては,235円/m2が相当である。
イ 被告製品(2)ないし(4)について 上記アと同様の理由で,235円が相当である。
もっとも,本件においては,被告が原告からの度重なる交渉を無視し,原告から本件実用新案権の実施許諾を受けている業者の売上が伸び悩むなどの特別な事情が存することから,上記235円に平成12年1月25日(訴状送達の日の翌日)から平成14年7月3日(同日付け原告準備書面により損害について補充主張をした日)まで年5分の利息を加算した265.55円/m2を実施料率として主張する。
(3) 損害額 ア 被告製品(1)について 原告は,3万1865平方メートルに上記235円を乗した748万8275円(平成5年12月31日まで製造分が235万3290円,平成6年1月1日から同年12月31日まで製造分が445万4425円,その余が68万560円)を損害として不当利得返還を請求するとともに,これに対する平成12年1月24日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払いを求める。
イ 被告製品(2)ないし(4)について 原告は,37万3277平方メートルに上記265.55円を乗じた9912万3707円を損害の額として不当利得返還を請求するとともに,同額につき平成4年12月9日(出願公告の日)から支払済みまで年5分の割合による利息の支払いを求める。
(被告) (1) 各被告製品の販売数量 原告は,非侵害品である防音床材ウッディスーパー45,ウッディハイカラスーパー45が,いずれも平成6年以降に販売されたことを前提に被告製品(2)ないし(4)の販売数量を主張するが,ウッディスーパー45は平成5年3月,ウッディハイカラスーパー45は,同年9月から売上を計上しているから,原告の主張は前提を誤っている。
(2) 実施料率について 原告は,ボード株式会社及び積水樹脂株式会社との間の実施許諾契約における一時金を被許諾者が実際に実施した面積で除した額を実施料に加算して実施料率を主張する。
しかし,一時金は,被許諾者の実施面積に無関係に支払わせるものであり,権利金的な性格を有するものであるから,これを被許諾者の実施面積で除した額を実施料に加算するのは不合理である。また,原告は,積水樹脂株式会社が原告に対して支払った一時金を,同社が平成6年12月以降に本件考案を実施した面積で除しているが,権利金が支払われたのは平成2年12月5日であり,その後約4年もの間,積水樹脂株式会社が本件考案を全く実施していなかったとは考えられないから,積水樹脂株式会社の本件考案の実施面積は,原告の主張より相当大きいものと考えられる。
また,原告は,被告製品(2)ないし(4)につき,235円に平成12年1月25日(訴状送達の日の翌日)から平成14年7月3日まで年5分の利息(複利計算)を加算した265.55円/m2を実施料率として主張する。
しかし,仮に,被告製品(2)ないし(4)が本件実用新案権を侵害するとしても,被告は,上記侵害につき善意であったから,民法704条の利息が生じることはない。また,仮に民法704条の適用が認められるとしても,原告が,複利計算によって算定された利息を請求できる根拠はない。
したがって,本件考案実施料相当額が235円ないし265.55円/m2 であるとする原告の主張は不当である。
当裁判所の判断
1 本件については,事案の性質上,争点4(本件実用新案権が無効事由を有することが明らかといえるか)から判断する。
(1) 本件考案の出願日について ア 証拠(甲1ないし3,20,21,乙5,36,37の1,2,38の1ないし5,47,48,49,57)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 原告は,昭和60年12月27日,乾式防振床材について特許出願した(原出願)。原出願の願書に添付された明細書の特許請求の範囲第1項には,次のような記載があった(乙5)。
「建造物の床基台11上に無機質繊維板或いは弾性ある樹脂板等よりなる所定の厚さの緩衝板1を敷設し,その上に貫通或いは半貫通のスリット4を所定の間隔に設置した合板,パーティクルボード等よりなる仕上板3を密設し,更にその表面にアスファルト紙,樹脂シート等の可撓性薄板5を貼着したことを特徴とする乾式防振床」 (イ) 原告は,平成元年3月24日,改正前実用新案法8条1項本文に基づき,原出願を実用新案登録出願に変更した(実願平1-33755。本件変更出願)。
この際,願書添付の明細書考案の詳細な説明欄の「アスファルト紙,樹脂シート等の可撓性薄板」の記載が「弾性ある可撓性薄板」との記載に変更され,実用新案登録請求の範囲の記載は全体として次のとおりであった。
「建造物の床基板上に敷設される緩衝板上に,貫通あるいは半貫通のスリットが所定間隔で設けられた仕上板が溶接されており,この仕上板上に樹脂シート等よりなる可撓性薄板が貼着され,この可撓性薄板上に木質床化粧板が配設されたことを特徴とする木質防振床材」 (ウ) 特許庁は,平成2年6月1日付で,原告に対し,本件変更出願について,拒絶理由を通知した。この際,拒絶の理由として,実願昭58-76587号(実開昭59-181156号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)が引用された。引用例1は,次のような内容である(甲20,21)。
「合板フロアーの下面に緩衝板として厚さ5ないし30ミリのゴム製マットを配し,その下層に合板等の板状体を配し,さらにその下層に弾性脚体が下面に並設された下地板の床パネルを配する床下構造(ただし,第2図では,合板よりゴム製マットが厚く描かれている。)。」 (エ) 原告は,上記拒絶理由通知に対し,平成2年9月8日付で次のような内容の意見書を提出した(甲21)。
「本件出願の考案は,木質床化粧板の下面に厚さ1ミリ程度の可撓性薄板を配したものであり,この薄板は,引用例1の考案のように緩衝板としての作用および効果を目的として採用したものではありません。」(5頁6ないし10行),「本件出願の考案においては,引用例1の厚さ5ないし30ミリのゴム製マットすなわち『厚手の緩衝マット』ではないところの,厚さ1ミリ程度の薄手のシートすなわち可撓性薄板を木質床化粧板とスリットを切刻した仕上板との間に挿入し,それら両者の一体化を避けるようにし,このような木質床化粧板とは物質成分の異なった可撓性薄板の挿入により衝撃振動の遮断を達成したものであります。もし本件出願の考案における可撓性薄板が必要以上に厚く,引用例1のように緩衝力のある緩衝板であるとすると,上部からの衝撃加振に際して仕上板にリバウンドによって振動増幅が生じ,かえって衝撃音防止の性能が低下するのみでなく,衝撃時の発音量が増大することになります」(5頁17ないし6頁7行) (オ) 特許庁は,同年11月16日で,本件出願に対し,拒絶すべき旨の査定を行った。
(カ) 原告は,平成3年1月19日付で,特許庁に対し,拒絶査定不服審判を請求し,同年2月9日付で,改正前実用新案法55条2項,改正前特許法17条の2に基づき,本件変更出願願書添付の明細書中実用新案登録請求の範囲の記載について,次のとおり補正する旨の請求をした(乙48)。
「任意の緩衝板上において貫通あるいは半貫通のスリットが所定間隔で設けられた仕上板上に合成樹脂シート等よりなり,仕上板および最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板を介在させて木質床化粧板が,順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化されたことを特徴とする木質防振床材」 (キ) 特許庁が,原告に対し,平成4年4月28日付尋問書(乙3)において,「実用新案登録請求の範囲に記載の『多分に薄目』とは,具体的にはどの範囲の寸法を表すのか考案の詳細な説明中に示されていない。寸法の範囲とその根拠を示す必要がある。」(2頁4ないし7行)と釈明したところ,原告は,同年7月10日付けの回答書(乙4)において,「多分に薄目」の根拠となる記載について,「原出願の明細書8頁第3ないし5行目において,『仕上板上の可撓性樹脂シートは厚さ1ミリであった』との記載による。」,「第図4は,緩衝板の厚さ10ミリの場合の例で,第5図は緩衝板の厚さ25ミリの場合の例である。その他の仕様は第4図,第5図共通で,仕上板の厚さ9ミリの合板上にの厚さ記載により,可撓性樹脂シートの厚さはそれらよりも多分に薄いことが記載されており,最上層の木質床化粧板は6mm前後のものが用いられることは,当業界の技術として通例のことである」(14頁14行ないし15頁6行)と答えた。
(ク) 上記のような経緯を経た後,本件変更出願は,平成4年12月9日に公告され,平成7年1月23日に,本件実用新案権が登録された。
(ケ) 被告ほか4名は,平成12年5月18日付で本件考案につき無効審判を請求した(乙38,無効2000-35274)。
特許庁は,平成13年4月10日,上記無効審判請求を不成立とする旨の審決を行い,被告ほか4名は,平成13年5月21日付で,同審決の取消訴訟
追加
東京高等裁判所は,平成15年1月30日,「本件考案は,『可撓性薄板が仕上板より多分に薄目』との構成を付加したことによって原出願に係る考案との同一性を失っているから,本件考案と原出願にかかる考案の同一性を認めた上で本件考案の出願日が昭和60年12月27日まで遡及することを前提になされた上記審決の判断は誤りである。」として,上記審決を取消す旨の判決(以下「本件審決取消判決」という。)を言渡し,同判決は,東京高等裁判所の上告却下決定により確定した。
イ以上の事実に基づき,本件考案の出願日につき検討する。
改正前特許法40条は,願書に添付した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があった後に認められたときは,その特許出願は,その補正について手続補正書を提出したときに出願したものとみなす旨規定し,改正前特許法41条は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において実用新案登録請求の範囲を増加し,減少し又は変更する補正明細書の要旨を変更しないものとみなす旨規定し,改正前実用新案法9条1項は,これらを実用新案登録出願に準用している。
そこで,本件補正が,明細書の要旨の変更に当たるかにつき検討するに,本件補正においては,可撓性薄板について,仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目であるという構成が付加されている。
そして,上記のような構成を付加することによって,上部からの衝撃加振に際して仕上板にリバウンドによって振動増幅が生じて衝撃音防止性能が低下したり,衝撃音の発音量が増大することを防止するという,本件変更出願に係る明細書及び図面に記載されていない発明の効果が付加されているから(乙4),上記変更は,明細書の要旨の変更に当たるというべきである。
この点につき,原告は,本件補正前の願書添付の明細書考案の詳細な説明中に可撓性薄板の厚さについての記載があり,平成2年9月8日付意見書において1mm程度の厚さの可撓性薄板の作用効果について記載していることを指摘する。
しかし,同意見書は,明細書又は図面の要旨の変更に当たるか否かの判断の根拠とはなり得ず,本件補正前の願書添付の明細書考案の詳細な説明における記載をみても,可撓性薄板を仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目であることを要素とする発明であると読みとることはできない。したがって,このような構成の付加が明細書の要旨の範囲内の変更であるということはできない。
上記によれば,本件補正考案の要旨の変更を伴う補正であるから,改正前実用新案法9条1項,改正前特許法40条の適用により,本件補正の日である平成3年2月9日が本件考案の出願日とみなされる。
(2)無効事由の有無ア実用新案法3条1項3号の無効事由について(ア)証拠(乙50,51,52,53,59)によれば,次の事実が認められる。
a昭和63年9月1日公開の実願昭62-26618号(実開昭63-134051号)のマイクロフィルム(別紙1C。乙50)には,次のような記載がある。
@実用新案登録請求の範囲「1)弾性下地材上に,基板を載設し,該基板上に弾性シート層を介して表面の化粧層を形成して成る防音床材。2)基板の弾性下地材側の裏面に,溝を刻設して成る実用新案登録請求の範囲第1項記載の防音床材。」A考案の詳細な説明「弾性下地材(1)と基板(2)と弾性シート層(3)と表面化粧層(4)とはそれぞれ接着剤を介在させて固着一体化したものである。本考案で用いている弾性下地材(1)は,柔軟性を有している発泡合成樹脂やゴム等でできており,その厚みは5mm乃至10mm程度のものが好ましい。又基板(2)は,合板,チップボード,インシュレーションボード等で出来ており,その厚みは3mm乃至7mm程度のものである。又弾性シート層(3)は,ゴムで出来ている厚み0.5mm乃至2.0mmのものが良く,又表面化粧層(4)は,厚み3mm程度の合板上に厚み0.3mm乃至0.5mm程度の木質単板を貼着した木質合板を用いている。」(4頁13行ないし5頁5行)上記記載及び図面の記載によれば,上記マイクロフィルムには弾性下地材(1)上において,溝が所定間隔で設けられた厚さ3mm乃至7mm程度の基板(2)上に,厚さ0.5mm乃至2.0mmの弾性シート層(3)を介在させて厚さ3.3mm乃至3.5mmの表面化粧層(4)が順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化された防音床材の考案が記載されているといえる。
そして,上記マイクロフィルムに記載された考案の「弾性下地材」,「基板」,「防音床材」は,それぞれ,本件考案の「緩衝板」,「仕上板」,「木質防振床材」に相当し,「表面化粧層」は,合板上に木質単板を貼着した木質合板からなっているから,本件考案の「木質床化粧板」に相当する。また,上記マイクロフィルムに記載された考案の「弾性シート」(厚さ0.5mmないし2.0mm)は,ゴムから成り,その厚さが「基板」(厚さ3mmないし7mm程度)及び「表面化粧層」(厚さ3.3mmないし3.5mm)の厚さの2分の1以下の場合を含む。
よって,上記マイクロフイルムには,本件考案の「仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」が記載されているといえる。
b平成元年1月10日公開の実願昭63-97965号(実開昭64-2941号)のマイクロフィルム(別紙1D,乙51)には,次のような記載がある。
@実用新案登録請求の範囲「木質基板の上面に軟質シート層を介して化粧板を積層し,同木質基板の下面にクッション材層を積層一体化してなる防音床材において,木質基板の下面に多数の条溝を刻設し,該条溝の深さ寸法を木質基板の厚さ寸法に略合致せしめてなる防音床材。」A考案の詳細な説明・「木質基板1の上面に軟質シート層2を介して化粧板3を積層し,同木質基板1の下面にクッション材層4を積層一体化してなる防音床材において」(3頁2行ないし4行)・「軟質シート層2は,軟質合成樹脂に硫酸バリウム,鉛粉等の遮音材を混入してなる軟質遮音シート12で形成されるものである。」(3頁8行ないし10行)・「これ等は,接着剤によって積層一体化されるものである。」(3頁15ないし16行)・「木質基板1は合板,パーティクルボード等でなり,その厚さ寸法は5mmから15mm程度である」(5頁10ないし11行)・「化粧板3は,…厚さ寸法が0.2mmから0.5mm程度の木質化粧単板7と厚さ寸法が3mmから7mm程度の合板6との積層板を用いることが好適ではある」(5頁15ないし19行)・「軟質シート層2は,…厚さ寸法は2mmから5mm程度である」(5頁20行から6頁3行)上記記載及び図面によれば,上記マイクロフィルムには,クッション層4上において多数の条溝が所定間隔で設けられた厚さ5mmから15mm程度の木質基板1上に,合成樹脂シート等よりなり,厚さが2mmから5mm程度の軟質シート層2を介在させて厚さ3.3mmから7.5mm程度の化粧版3が順次積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化された防音床材に係る考案が記載されている。
そして,上記マイクロフィルムに記載された考案の「クッション層」,「木質基板」,「防音床材」は,本件考案の「緩衝板」,「仕上板」,「木質防振床材」にそれぞれ相当し,同マイクロフィルムに記載された考案の「化粧板」は,木質化粧単板と合板からなっているから,本件考案の「木質床化粧板」に相当する。また,上記マイクロフィルムに記載された考案の「厚さが2mmから5mm程度の弾性シート層」は,その厚さが,木質基板(厚さは5mmから15mm程度)及び化粧板(厚さ3.3mmから7.5mm程度)の厚さの2分の1以下の場合を含むから,本件考案の「仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」に含まれる。このことは,上記マイクロフィルムに「軟質シート層2において伝播音が遮断され,…しかしながら,従来例においては,軟質シート層2を通過して木質基板1に至った伝播音が木質基板全体に拡散されて大きな範囲で伝播音が木質基板1全体に拡散されて…防音効果が充分に奏されない」(2頁2ないし11行),「該実施例においては,軟質シート層2を通過して木質基板1に至った伝播音が木質基板1全体に拡散されることなく条溝5によって区切られた小さな範囲でしか下方に移行することがなく,防音効果が充分に奏され」(4頁4ないし13行)と,本件考案と同じ機能・効果が記載されていることからも裏付けられる。
よって,上記マイクロフィルムには,本件考案の「仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」が記載されているといえる。
c平成元年6月5日公開の特開平1-142171号公報(別紙1E。乙52)には,次のような記載がある。
@特許請求の範囲「基材の下面から上方に複数の切溝を切り込み,基材の表面に弾性シートを介在して表面材を積層させた防音基材であって,表面材が合板の両面に突板を貼着させたものであることを特徴とする防音床材」A発明の詳細な説明・「基材1には複数の切溝2が設けられており,…切溝2は例えば幅が3mmでピッチが60mmで切り込まれる」(2頁右上欄2ないし5行)・「この基材1は合板などであり,通常2.3〜9.0mm厚のものが使用される」(2頁右上欄10ないし11行)・「弾性シート3としては…ウレタン樹脂,シリコン樹脂等の軟質材が好ましく…通常1mm以下の厚みのものが使用される」(2頁右上欄13ないし16行)・「この表面材4は,例えば2.7mm厚の合板5の両面に0.3mm厚の…突板6を平行貼り,又は直交貼りさせたものである。」(2頁右上欄18ないし20行)・「この防音床材Aの基材1の下面に厚み5mm程度のポリエチレン,天然ゴムの発泡体のようなクッション材7が貼着されて」(2頁左下欄1ないし3行)上記記載及び図面の記載によれば,上記公報にはクッション材7上において,複数の切溝が所定間隔で設けられた厚さ2.3mmから9mmの基材1上に,合成樹脂シート等よりなり,厚さが1mm以下の弾性シート3を介在させて厚さ3mmの表面材4が順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化された防音床材に係る考案が記載されている。
そして,同公報に記載された考案の「クッション材」,「基材」,「防音床材」は,それぞれ,本件考案の「緩衝材」,「仕上板」,「木質防音床材」に相当し,同公報に記載された考案の「表面材」は,合板,突板からなっているから,本件考案の「木質床化粧板」に相当する。また,同公報に記載された考案の「厚さが1mm以下の弾性シート」は,その厚さが,基材(厚さは2.3mmから9mm)及び表面材(厚さ3mm)の2分の1以下の場合を含むから,本件考案の「合成樹脂シート等よりなり,仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」に相当する。
よって,同公報には,本件考案の「仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」が記載されているといえる。
d平成2年1月25日公開の実願昭63-90360号(実開平2-11943号)のマイクロフィルム(別紙1F。乙53)には,次のような記載がある。
@実用新案登録請求の範囲「1.発泡体層の表面に基材合板,制振シート及び化粧合板を順次積層した防音床材において,発泡体層の少なくとも一方の表面に連通した溝を設け,上記基材合板にも連通したスリット状の溝を配したことを特徴とする防音床材。」A考案の詳細な説明・「制振シート(6)は塩化ビニルや加硫ゴムでもよいが,非加硫ゴムが更に適切で合成の振動を緩和させる」(5頁17ないし19行)・表1に,基材合板の厚み5.5mm,制振シート1mm,化粧合板の厚み2.5mmが記載されている。
上記記載及び図面の記載によれば,上記マイクロフィルムには,発泡体層(2)上において,多数の溝が所定間隔で設けられた厚さ5.5mmの化粧合板(4)上に,合成樹脂シート等よりなり,厚さが1mmの制振シート(6)を介在させて厚さ2.5mmの化粧合板(7)が順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化された防音床材に係る考案が記載されている。
そして,上記マイクロフィルムに記載された考案の「発泡体層材」,「基材合板」,「化粧合板」,「防音床材」は,本件考案の「緩衝材」,「仕上板」,「木質床化粧板」,「木質防振床材」にそれぞれ相当する。また,上記マイクロフィルムに記載された考案の「厚さが1mmの制振シート」は,その厚さが基材合板(厚さ5.5mm)及び化粧合板(厚さ2.5mm)の2分の1以下の場合を含むから,本件考案の「合成樹脂シート等よりなり,仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」に相当する。
よって,上記マイクロフィルムには,本件考案の「仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」が記載されているといえる。
e平成元年4月24日に国立国会図書館に受け入れられた雑誌「GBRC」(GeneralBuildingResearchCorporation)Vol.14No.2(54号)(財団法人日本建築総合試験所発行)(別紙1G。乙59)には,厚さ8mmのゴムクッション材の上面に,多数の溝が所定間隔で設けられた厚さ9mmの溝入り特殊合板,厚さ1mmの制振シート,厚さ3mmの化粧合板が順次,積層貼着され,所定の形状,寸法に一体化された「ウッディ55」が記載されている。
そして,上記雑誌に記載された考案の「ゴムクッション材」,「溝入り特殊合板」,「化粧合板」は,本件考案の「緩衝板」,「仕上板」,「木質床化粧板」にそれぞれ相当する。また,同雑誌に記載された考案の「厚さ1mmの制振シート」は,その厚さが,特殊合板(厚さ9mm),化粧合板(厚さ3mm)の2分の1以下の場合を含むものであるから,本件考案の「合成樹脂シート等よりなり,仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」に相当する。
よって,同雑誌には,本件考案の「仕上板及び最上層の木質床化粧板よりも多分に薄目の可撓性薄板」が記載されているといえる。
(イ)上記によれば,aないしe記載の考案はいずれも本件考案と同一であり,aないしeに掲げた公報等はいずれも本件考案の出願日とみなされる平成3年2月9日より前に日本国内において頒布された刊行物であるから,本件考案は,実用新案法3条1項3号に違反して登録されたものであり,同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
イ実用新案法3条1項2号の無効事由について(ア)証拠(乙2の2,56)によれば,次の事実が認められる。
被告製品(2)(ウッディ45。別紙1J)は,次のような構成を有する。
緩衝材の上面に,横方向に60mm間隔で,縦方向に2本のスリットが設けられた厚さ8.5mmの合板(仕上板),厚さ1mmのゴム発砲体(可撓性薄板),厚さ2.8(3.5mm)の突板張り合板(木質床化粧板)が順次,積層貼着され,長さ1818mm,幅151.5mmの長方形状に一体化された防音木質床材である。
そして,被告製品(2)は,平成2年2月1日発行の製品カタログ(乙56)に記載されているから,この時点で製造販売されていた。
(イ)上記によれば,被告製品(2)(ウッディ45)は本件考案と同一であり,本件考案の出願日とみなされる平成3年2月9日より前に日本国内において公然実施されていたものであるから,本件考案は,実用新案法3条1項2号に違反して登録されたものであり,同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかである。
2以上によれば,本件考案は,実用新案法3条1項2号,3号に違反して登録されたものであり,同法37条1項2号の無効事由を有することが明らかであるといえるから,原告の本件実用新案権に基づく損害賠償の請求は,権利の濫用に当たり許されない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件請求は理由がない。
よって主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官三村量一裁判官青木孝之裁判官吉川泉(別紙)別紙1別紙2
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