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関連審決 無効2015-400005
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事件 平成 28年 (行ケ) 10148号 審決取消請求事件

原告 株式会社ハイジェンテックソ リューション
同訴訟代理人弁護士 細矢眞史
同訴訟復代理人弁理士 大石皓一 岸本高史
被告株式会社光未来
同訴訟代理人弁理士 田中泰彦 森俊晴
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2017/03/28
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2015-400005号事件について平成28年4月20日にした審決を取り消す。
1
事案の概要
1 特許庁等における手続の経緯 ? 被告は,平成26年3月12日,考案の名称を「気体溶解装置」とする実用新案登録出願(実願2014-1248号)をし,平成26年4月30日,設定の登録を受けた(実用新案登録第3190824号。請求項の数10。甲14。以下,この実用新案を「本件実用新案」という。。
) ? 被告は,平成27年8月26日付けで,実用新案法14条の2第1項に基づき,実用新案登録請求の範囲減縮等を目的とする訂正をした(請求項の数8。甲13。以下「本件訂正」という。) ? 原告は,平成27年9月9日,本件実用新案について実用新案登録無効審判を請求した(甲15,16)。
? 特許庁は,これを,無効2015-400005号事件として審理し,平成28年4月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同年5月9日,その謄本が原告に送達された。なお,出訴期間として90日が附加された。
? 原告は,平成28年6月29日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 実用新案登録請求の範囲の記載 本件訂正後の実用新案登録請求の範囲請求項1ないし8の記載は,次のとおりである(甲13)。以下,請求項1に係る考案を「本件考案1」などといい,これらを併せて「本件考案」という。本件訂正後の明細書(甲13)を,本件実用新案の登録実用新案公報(甲14)掲載の図面と併せて「本件明細書」という。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所を示す(以下同じ。。
)【請求項1】気体を発生する気体発生機構と,/前記気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と,/前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構と,/前記液体が細管を流れることで降圧する降圧機構と,を有し,/前記細管 2 の内径が,1.0mmより大きく5.0mm以下であり,/前記気体が水素であり,前記気体発生機構が,水素発生機構であることを特徴とする気体溶解装置。
請求項2】前記水素発生機構が,電気分解により水素を発生させるものである請求項1記載の気体溶解装置。
請求項3】前記気体が水素であり,水素の前記液体中の濃度が7℃で1.5ppmより大きい請求項2記載の気体溶解装置。
請求項4】前記気体発生機構と,前記加圧型気体溶解機構とを制御するコントロール機構を有する請求項3記載の気体溶解装置。
請求項5】前記コントロール機構により,前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構の稼働時間が5〜60分間であり,かつ前記稼働時間の1〜5倍の停止時間で,前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構を制御する請求項4記載の気体溶解装置。
請求項6】前記加圧型気体溶解機構が,ダイヤフラムポンプである請求項5記載の気体溶解装置。
請求項7】前記溶存機構を2個以上有する請求項6記載の気体溶解装置。
請求項8】前記気体発生機構が,イオン交換機構を有する請求項7記載の気体溶解装置。
3 本件審決の理由の要旨 ? 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,@本件考案1は,下記アの引用例1に記載された考案(以下「引用考案1」という。)及び下記イの引用例2に記載された考案(以下「引用考案2」という。)に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものとはいえず,実用新案法3条2項の規定に反して実用新案登録されたものとすることはできない,A本件考案2ないし8も,本件考案1と同様の理由により,実用新案法3条2項の規定に反して実用新案登録されたものとすることはできない,というものである。
ア 引用例1:特開2010-115594号公報(甲2) 3 イ 引用例2:特開2008-188574号公報(甲3) ? 本件審決が認定した引用考案1,本件考案1と引用考案1との一致点及び相違点,引用考案2は,次のとおりである。
ア 引用考案1 水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解槽と,/前記発生した水素ガスと酸素ガスと水との混合液を加圧しながら送液する加圧ポンプと,/水に対する前記水素ガスと酸素ガスの溶解度を高める加圧溶解タンクと,/前記水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を減圧する絞り機構と,/前記加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の受水槽と,/を有する微細気泡発生装置 イ 本件考案1と引用考案1との一致点 気体を発生する気体発生機構と,/前記気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と,/前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構と,/前記液体を降圧する降圧機構と,を有する,/装置である点 ウ 本件考案1と引用考案1との相違点 (ア) 相違点1 「気体」 「気体発生機構」及び「装置」が,本件考案1においては,それぞれ ,「水素ガス」「水素発生機構」及び「気体溶解装置」であるのに対し,引用考案1 ,においては,それぞれ「水素ガスと酸素ガス」 「水を電気分解して水素ガスと酸素 ,ガスとを発生させる電解槽」及び「微細気泡発生装置」であって,「前記加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の受水槽」を有する点 (イ) 相違点2 「降圧機構」が,本件考案1においては,「前記液体が細管を流れることで降圧する降圧機構」であって,「前記細管の内径が,1.0mmより大きく5.0mm以下」であるのに対し,引用考案1においては,「前記水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を減圧する絞り機構」である点 エ 引用考案2 4 加圧溶解部から気体溶解液を送り出す流路の一部として設けられた減圧部を備える気体溶解装置であって,減圧部を内径2〜50mm程度の流路として形成する気体溶解装置 4 取消事由 ? 本件考案1の容易想到性の判断の誤り ? 本件考案2ないし8の容易想到性の判断の誤り
当事者の主張
1 取消事由1(本件考案1の容易想到性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件審決による引用考案1及び引用考案2,本件考案1と引用考案1との一致点及び相違点の認定(前記第2の3?)は,争わない。
しかし,本件審決は,相違点1及び2に係る本件考案1の構成につき,きわめて容易に想到し得たとはいえないと判断した点において誤りがある。
また,引用例1からは,後記?アの引用装置1を認定することができ,引用装置1から後記?イの相違点1’及び2’に係る本件考案1の構成をきわめて容易に想到し得る。本件審決は,引用例1から引用考案1のみを認定して前記のとおり判断した点においても誤りがある。
? 引用考案1に基づく容易想到性について ア 相違点1に係る容易想到性について 近年,水素ガスが過飽和の状態で溶解した水素水に対する需要が高まっており,水素水を効率的に製造することは,本件出願当時において,周知の技術的課題であった。
引用例1の【0027】及び【0028】の記載によれば,引用考案1の構成のうち,上記技術的課題の解決に必要なのは,「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解槽と,/前記発生した水素ガスと酸素ガスと水との混合液を加圧しながら送液する加圧ポンプと,/水に対する前記水素ガスと酸素ガスの溶解 5 度を高める加圧溶解タンク」であり,「絞り機構」と「受水槽」は,上記技術的課題の解決に必要なものということはできない。そして,引用考案1の構成のうち上記技術的課題の解決に必要な上記の構成は,本件考案1の構成から,引用考案1の絞り機構に相当する降圧機構を取り除いたものと実質的に同一である。
したがって,相違点1は,実質的な相違点とはいえない。
イ 相違点2に係る容易想到性について (ア) 引用例2には,引用考案2のみならず,@液体を収容する液体槽17と,A液体槽17から吸い上げられた液体が流れる流路15と,B空気,酸素,オゾン,水素,窒素等の気体を流路15に供給する,流路15に接続された気体注入部2と,C液体槽17から液体を吸い上げ,気体が注入された液体を加圧溶解部3内に圧送して送り込むポンプ18と,D加圧により液体に飽和量以上の気体を溶解させ,その気体溶解液を収容する加圧溶解部3を備えた装置(以下「引用装置2」という。)も開示されている(【0032】〜【0035】【0038】【0039】 。そして, )引用考案1の電解槽,加圧ポンプ及び加圧溶解タンクは,それぞれ引用装置2の気体注入部2に接続された水素ボンベ,ポンプ18及び加圧溶解部3に相当するものであり,引用考案1と引用装置2は,主要な構成において実質的に同一である。
引用考案1の微細気泡発生装置は,微細気泡が発生するように構成されている(【0029】【0032】)のに対し,引用考案2の気体溶解装置は,気体が高い溶解度(過飽和)で溶解した水から気泡が発生しないように構成されている(【0038】。水素水を製造する場合,水素が高い溶解度で溶解した水から気泡が発生 )しないような構成を要することは技術常識であるから,引用考案1に接した当業者は,気泡の発生を防ぐために,引用考案1の加圧溶解タンクの下流側に,絞り機構に代えて,引用考案2の減圧部を設けることを動機付けられる。上記のとおり引用考案1と,引用考案2と同じく引用例2に開示されている引用装置2が主要な構成において実質的に同一であることにも鑑みれば,上記の動機付けに不自然な点はない。
6 そして,引用考案2の減圧部の内径は,「2〜50mm」であり,本件考案1において「1.0mmより大きく5.0mm以下」とされる細管の内径と重複するものである。
以上によれば,引用考案1に引用考案2を組み合わせ,引用考案1の絞り機構に代えて引用考案2の減圧部を設けることは,当業者においてきわめて容易に想到し得るものであり,それは,相違点2に係る本件考案1の構成にほかならない。
(イ) 本件審決について 本件審決は,引用例1には,電気分解により発生させた酸素ガス及び水素ガスを混合使用し,微細気泡を発生させてガスの溶解を促進するとともに,発生ガスの微細気泡をそのまま利用することで微細気泡の有する浮上促進や気液洗浄効果を引き出すことが解決すべき技術的課題として記載されており,引用考案1における「前記水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を減圧する絞り機構」は,上記技術的課題を解決するために必須の構成要件であるとして,これを,明らかに機能が異なる引用考案2の減圧部に置換する動機付けはなく,阻害要因がある旨判断した。
しかし,当業者は,本件出願当時,水素ガスが過飽和の状態で溶解した水素水を効率的に製造するという周知の技術的課題に直面していたのであるから,引用例1に,加圧溶解タンク内において,加圧ポンプから供給された水素ガスと酸素ガスが混合された水を加圧して水素ガスと酸素ガスの溶解度を高めることができる旨の記載があるにもかかわらず,技術文献としての引用例1を,上記水素水の製造方法を検討する上で役に立たないとして検討の対象から除外することはあり得ない。
本件審決の前記判断は,引用例1及び2の明細書を,特許権の範囲を確定する役割を有しているのみで技術文献としての役割は有していないものと捉えて,記載された技術的課題に過度に拘泥するものであり,失当である。
(ウ) 小括 したがって,相違点2に係る本件考案1の構成は,当業者においてきわめて容易に想到し得たものである。
7 ? 引用装置1に基づく容易想到性について ア 引用装置1の認定について 前記?アのとおり,当業者は,本件出願当時において,水素水を効率的に製造するという周知の技術的課題に直面していたのであるから,引用例1の【0027】及び【0028】の記載に接すれば,@電解槽において水の電気分解により水素ガスを生成し,A加圧ポンプにより流路内を流れる水の流速により負圧を発生させて,上記水素ガスを,加圧ポンプの上流側に接続された吸引管を介して吸引し,流路内を流れる水と混合させながら加圧溶解タンク内に送液し,Bこの水素ガスが混合した水を加圧溶解タンク内で加圧することによって水素ガスの溶解度を高め,水素が過飽和状態で含まれる水素水を生成することができるとの知見を得られたものと考えられる。
したがって,引用例1には,@水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解槽1と,A生成された水素ガスと酸素ガスを吸引し,流路内を流れる水と混合させながら加圧溶解タンク5内に送液する加圧ポンプ4と,B加圧ポンプ4から供給された水素ガスと酸素ガスが混合した水を加圧することによって水素ガスと酸素ガスの溶解度を高める加圧溶解タンク5を備えた装置(以下「引用装置1」という。)が記載されているものということができる。
イ 本件考案1と引用装置1との一致点及び相違点について (ア) 本件考案1と引用装置1との一致点 気体を発生する気体発生機構と,/前記気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と,/前記気体が溶解した前記液体を溶存する溶存機構と,を有する装置である点 (イ) 本件考案1と引用装置1との相違点 a 相違点1’ 「気体」及び「気体発生機構」が,本件考案1においては,それぞれ「水素ガス」「水素発生機構」であるのに対し,引用装置1においては,それぞれ「水素ガ , 8 スと酸素ガス」「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解槽」で ,ある点 b 相違点2’ 本件考案1は,気体が溶解した液体を降圧する降圧機構を備えているのに対し,引用装置1は,降圧機構を備えていない点 ウ 相違点1’に係る容易想到性について 前記アのとおり,当業者は,本件出願当時,引用例1の【0027】及び【0028】の記載に接すれば,電解槽において水の電気分解により水素ガスを生成し,これを水と混合したものに加圧して水素ガスの溶解度を高めることにより,水素が過飽和状態で含まれる水素水を生成することができるとの知見を得られたものと考えられる。そして,引用装置1の構成は,本件考案1の構成から降圧機構を取り除いたものと実質的に同一である。
したがって,相違点1’は,実質的な相違点とはいえない。
エ 相違点2’に係る容易想到性について 引用装置1の電解槽1,加圧ポンプ4及び加圧溶解タンク5は,それぞれ引用装置2の気体注入部2に接続された水素ボンベ,ポンプ18及び加圧溶解部3に相当し,引用装置1と2は,主要な構成において実質的に同一である。
そして,前記?イ(ア)のとおり,水素水を製造する場合,水素が高い溶解度で溶解した水から気泡が発生しないような構成を要することは技術常識であるから,引用装置1に接した当業者は,気泡の発生を防ぐために,引用装置1の加圧溶解タンク5の下流側に,引用例1記載の絞り機構6に代えて,引用例2記載の減圧部4及び流路6を設けることを動機付けられる。上記のとおり引用装置1と2が主要な構成において実質的に同一であることにも鑑みれば,上記の動機付けに不自然な点はない。
そして,引用例2には,減圧部4につき,「内径2〜50mm程度の比較的大きい流路として形成することができる」との記載があり(【0053】 ,これは,本 ) 9 件考案1において「1.0mmより大きく5.0mm以下」とされる細管の内径と重複するものである。
そうすると,上記のとおり,引用装置1の加圧溶解タンク5の下流側に,引用例1記載の絞り機構6に代えて,引用例2記載の減圧部4及び流路6を設けた水素水の製造装置は,本件考案1の気体溶解装置と実質的に同一の構成を有することとなる。
したがって,相違点2’に係る本件考案1の構成は,当業者においてきわめて容易に想到し得たものである。
オ 本件審決について 本件審決は,原告が引用例1から引用装置1のみを取り出すことができる具体的理由を述べていないとして,引用考案1のみを認定して本件考案1の容易想到性を判断した。
しかし,本件審決が引用装置1を認定しなかったことは,前記?イ(イ)と同様の理由により,誤りである。
〔被告の主張〕 ? 引用考案1に基づく容易想到性について ア 相違点1に係る容易想到性について 水素水を効率的に製造することが本件出願当時において周知の技術的課題であったとしても,本件考案1と引用考案1との間の相違点1に係る容易想到性を判断する上での技術的課題ではない。
仮に水素水を効率的に製造することが相違点1に係る容易想到性を判断する上での技術的課題であったとしても,なぜ「絞り機構」と「受水槽」が同技術的課題の解決に必要なものといえないのか,不明である。
イ 相違点2に係る容易想到性について 引用例1に明記されているとおり,引用考案1は,気泡を発生させる構成のものであるから,その一部を,気泡を発生させない構成が記載された引用例2から認定 10 される引用考案2ないし引用装置2と置換する動機付けはあり得ない。
たとえ原告が主張するとおり引用考案1と引用装置2が主要な構成において実質的に同一であり,また,水素水を製造する場合には水素が高い溶解度で溶解した水から気泡が発生しない構成を要することが技術常識であったとしても,引用考案1に引用考案2ないし引用装置2を適用する動機付けがあるとは考え難い。
? 引用装置1に基づく容易想到性について ア 引用装置1の認定について 水素水を効率的に製造することが本件出願当時において周知の技術的課題であったとしても,引用例1に記載された考案を認定する上での技術的課題ではなく,よって,引用例1から引用装置1を認定することができるとはいえない。
イ 相違点1’に係る容易想到性について 前記アのとおり,そもそも引用例1から引用装置1を認定することはできない。
ウ 相違点2’に係る容易想到性について たとえ引用例1から引用装置1を認定し得たとしても,前記?イと同様の理由により,相違点2’に係る本件考案1の構成は,当業者においてきわめて容易に想到し得たものとはいえない。
2 取消事由2(本件考案2ないし8の容易想到性の判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件考案2ないし8は,前記1〔原告の主張〕と同様の理由により,当業者において引用考案1ないし引用装置1からきわめて容易に想到し得たものである。
〔被告の主張〕 本件考案2ないし8は,前記1〔被告の主張〕と同様の理由により,当業者において引用考案1ないし引用装置1からきわめて容易に想到し得たものではない。
当裁判所の判断
1 本件考案1について 本件考案1に係る実用新案登録請求の範囲は,前記第2の2【請求項1】のとお 11 りであるところ,本件明細書(甲13)によれば,本件考案1の特徴は,以下のとおりである。
? 技術分野 本件考案1は,気体を過飽和の状態で液体に溶解させるとともにその過飽和の状態を安定に維持することができ,さらにウォーターサーバー等へ容易に取り付けることができる気体溶解装置に関するものである(【0001】。
) ? 背景技術 液体に充てんさせた気体を摂取することによって,気体のままではなかなか人間の体内に取り込めなかったものも容易に取り込むことができるようになり,個々の気体の有用な効果が発揮されやすくなる。例えば,水やお茶等の飲料に水素ガスを充てんした清涼飲料水などが販売されているが,そのような飲料水等は,液体に充てんした水素ガスを摂取することによって人間の体内に存在する活性酸素を還元させることを目的とするものである(【0002】【0003】。
) 余剰の活性酸素は,細胞を損傷して生活習慣病や老化等を招く原因となることから,健康維持のために排除することが求められている。水素は,活性酸素のうちヒドロキシラジカルのみを還元し,身体に有効な活性酸素に影響を与えない,活性酸素と反応すると水に変化し,安全性が高いなどの利点を備えていることから,近年,余剰の活性酸素を排除する物質として用いられている(【0004】【0005】。
) このように,水素ガスの摂取は,病気予防や健康増進といった有用な効果を奏し,他の気体の摂取も,それぞれに特有の上記効果を奏することから,水素等の気体を液体に溶解する種々の手段が公開されてきた(【0007】〜【0012】。
) ? 本件考案1が解決しようとする課題 しかし,従来の技術では,水素水は得られるものの,気体を過飽和の状態で液体に溶解させてその過飽和の状態を安定に維持できなかったことから,上記水素水の濃度は低く,十分な効果が得られるものではなかった。さらに,設備が大がかりなものであるために十分なスペース等を要し,ウォーターサーバー等に容易に取り付 12 けることができないという問題点があった。加えて,降圧機構が複数のキャピラリーを有するものについては,降圧機構のスペースを広く確保する必要があるためにウォーターサーバー等に容易に取り付けることができず,製造や故障時の修理も煩雑なものとなり,実用化の面でも問題があった(【0013】【0014】。
) ? 課題を解決するための手段 本件考案1の目的は,前記?の従来技術の問題点を解決し,気体を過飽和の状態で液体に溶解させるとともにその過飽和の状態を安定に維持することができ,さらにウォーターサーバー等に容易に取り付けることができる気体溶解装置を提供することである(【0015】 。なお,過飽和とは,ある温度における気体の液体への )溶解量が,当該温度における気体の液体への溶解度よりも多い状態を指す(【0025】。
) 本件考案1の考案者らは,気体を加圧して溶解させた液体を細管中に流して降圧することによって上記目的を達成し得ることを見いだし,本件考案1を完成した(【0016】〜【0018】。
) ? 本件考案1の効果 本件考案1の気体溶解装置は,気体を加圧して溶解させた液体を細管中に流して降圧することによって,気体を過飽和の状態で液体に溶解させるとともにその過飽和の状態を安定に維持することができ,ウォーターサーバー等に容易に取り付けることができる(【0023】 。すなわち,気体発生機構において発生した気体が, )加圧型気体溶解機構及び溶存機構を経て,過飽和で液体に溶存した状態となり,その液体が細管中を流れて降圧するという一連の過程によって,気体を過飽和の状態で液体に溶解させ,その過飽和の状態を安定に維持することができる(【0025】。
) また,上記細管の内径を1.0mmより大きく5.0mm以下の範囲とすることによって,従来技術のように降圧のために複数本の細管を設置する必要がなく,1本の細管で降圧することができるので,ウォーターサーバー等へ容易に取り付ける 13 ことができ,製造や故障時の修理も容易となる(【0029】。
) 2 引用考案1及び2について ? 引用例1の記載 引用例1(甲2)には,本件審決が認定したとおりの引用考案1(前記第2の3?ア)が記載されていることが認められ,この点につき,当事者間に争いはない。
引用例1には,引用考案1について以下の点が開示されている(下記記載中に引用する図面については,別紙1参照)。
ア 技術分野 引用考案1は,水素ガス及び酸素ガスを含有した微細気泡発生装置及びそれにより製造される還元水に関するものである(【0001】。
) イ 背景技術 水素ガス及び酸素ガスの微細気泡発生に関する従来の技術には,水素ガス又は酸素ガスを高圧ボンベから吹き込む方法,高圧水素ガスを加圧溶解して常圧に戻した還元水を得る方法などがあるものの,それらは,液中に高濃度の水素を溶解させることに主眼を置いており,気泡を積極的に発生させて利用するものではなかった(【0002】〜【0013】。
) ウ 課題 引用考案1は,電気分解により発生した酸素ガスと水素ガスを混合使用し,微細気泡を発生させてガスの溶解を促進させるとともに,微細気泡をそのまま利用することによって微細気泡の浮上促進や気液洗浄効果を引き出 すことを目的とする(【0014】。
) エ 課題を解決するための手段 上記ウの目的を達成するための微細気泡発生装置の構成は,@水を電気分解して水素ガスと酸素ガスを発生させる電解質を含む電解槽,Aその水素ガスと酸素ガスを吸引して水と混合しながら加圧溶解タンクに送液する加圧ポンプ,B加圧ポンプからの送液を受け,これに加圧して水素ガスと酸素ガスの水に対する溶解度を高め 14 る加圧溶解タンク,C水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を急減圧する絞り機構,D絞り機構からの送液を受け,その圧力を開放して水に水素ガスと酸素ガスが混合した微細気泡を発生させるための加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の容器を有することを特徴とする(【0017】。
) オ 効果 引用考案1によれば,電解質溶液を電気分解して水素ガスと酸素ガスを発生させ,混合ガスとして加圧ポンプの吸水側で吸引し,加圧溶解タンクに送液した後,加圧溶解タンク内で加圧溶解したものを急減圧する絞り機構を通して低圧容器側に送り出すことによって,水素ガスと酸素ガスの微細気泡を発生させることができる(【0020】。
) カ 実施形態 (ア) 【図1】において,1は水を電気分解して水素ガス(H 2 )と酸素ガス(O2)とを発生させる電解質を含む電解槽であり,陰極1a側に水素ガス2が発生し,陽極1b側に酸素ガス3が発生する。電解槽1には,給水口1dを介して,外部から水,好ましくは蒸留水や脱イオン水が適宜補給される(【0026】。
) 加圧ポンプ4,加圧溶解タンク5,絞り機構6,容器となる受水槽7が順次直列に配管されて循環水路8を構成している。加圧ポンプ4によって循環水路8内を流通する水の流速により負圧が発生し,電解槽1から発生した水素ガス2と酸素ガス3は,上記負圧によって吸引され,加圧ポンプ4の上流側に接続された吸引管9a,9bを介して循環水路8内を流通する水と混合しながら加圧溶解タンク5内に送液される(【0027】。
) (イ) 加圧溶解タンク5は,加圧ポンプ4からの送液を受水するとともに,受水した水素ガス2と酸素ガス3を加圧して水に対する溶解度を高めるものである。本実施形態では,例えば0.4MPa程度に加圧し,水素ガス2と酸素ガス3を大気圧のときよりも加圧圧力に応じた溶解度に高めた状態で水に溶け込ませる。このようにして得られた圧力水5aは,絞り機構6に送液され,絞り機構6によって急減 15 圧される(【0028】【0029】。
) (ウ) 絞り機構6の下流側には,加圧溶解タンク5内の圧力よりも低圧の容器となる受水槽7が接続されており,受水槽7は,絞り機構6からの送液を受け,絞り機構6によって急減圧された圧力水5aを大気圧に開放し,水中に水素ガス2と酸素ガス3が混合した微細気泡10を発生させるための容器である。【図1】においては受水槽7内を大気圧としたが,加圧容器である加圧溶解タンク5よりも低圧であればよく,大気圧に限定されない(【0032】。
) ? 引用例2の記載 引用例2(甲3)には,本件審決が認定したとおりの引用考案2(前記第2の3?エ)が記載されていることが認められ,この点につき,当事者間に争いはない。
引用例2には,引用考案2について以下の点が開示されている。
ア 技術分野 引用考案2は,気体を高濃度で溶解した気体溶解液を得るために用いられる気体溶解装置に関するものである(【0001】。
) イ 背景技術 酸素,二酸化炭素等の気体を水などの液体に高濃度に溶解させた気体溶解液は,環境分野における池や貯水池等の閉鎖水域の浄化等,農林水産分野における溶液栽培等,各種の分野に利用されている(【0002】。
) 従来,気体を高濃度に溶解した気体溶解液を製造する気体溶解装置として,密閉タンク内に液体と気体を供給して製造する装置があったが,大きな密閉タンクを要し,また,気体溶解液を密閉タンクから取り出す際に,圧力の急激な低下で液体中に気泡が発生し,気体溶解量が減少するなどの問題があった。酸素を含有する気体と液体を加圧下において混合することにより液体中に気体を溶解させて高酸素濃度の気泡水を生成する装置もあったが,同様に,高酸素濃度の気泡水を供給する際に,圧力の急激な低下で液体中に気泡が発生し,酸素溶解量が減少するという問題があった(【0003】〜【0006】。
) 16 他方,気体を高濃度に溶解した気体溶解液を,液体中に気泡が発生しない状態で吐出できるようにした技術も複数あったものの,いずれも気体溶解液を細管を通して減圧することによって気泡が発生しないようにするものであり,異物の混入によって細管に詰まりが発生しやすいという問題があった(【0007】〜【0010】。
) ウ 課題 引用考案2は,前記イの背景技術の問題に鑑み,大きなタンクを必要とすることなく,効率よく気体を溶解させることができるとともに,異物が混入しても詰まりを発生させずに気体溶解液を減圧することができ,気泡の発生を防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができる気体溶解装置の提供を目的とするものである(【0011】。
) エ 課題を解決するための手段 引用考案2は,@加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部と,A加圧溶解部において気体を溶解させた気体溶解液の圧力を,その流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部を備え,気泡が発生しない気体溶解液を提供するものであり(【0012】 ,減圧部は,加圧溶解部から気体溶解液を送り出す流路の一 )部として設けられ,気体溶解液の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであることから,内径2〜50mm程度の比較的大きい流路として形成される(【0053】。
) オ 効果 加圧によって気体を溶解させるので,効率よく気体を溶解させることができるとともに,加圧溶解部を容積の大きなタンクで形成する必要がなく,装置の規模を小さくすることができる(【0013】【0030】。
) 気体溶解液は,加圧溶解部内において高圧が加えられた状態にあるので,そのまま大気圧下にある外部に排出されると,急激な圧力低下によって気体溶解液中に気泡が発生して気体溶解量が減少するおそれなどがある(【0038】 。気体溶解液 ) 17 の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する前記エの減圧部は,気体溶解液に気泡が発生することを防止して安定した高濃度の気体溶解液を提供することができるとともに,内径2〜50mm程度の比較的大きい流路として形成されていることから,異物が混入しても詰まることなく,また,気体溶解液の供給量を多くすることができるので,1つの流路のみで足り,装置構成を簡単なものにすることができる(【0013】【0030】【0054】。
) 3 取消事由1(本件考案1の容易想到性の判断の誤り)について ? 引用考案1に基づく容易想到性について ア 相違点1に係る容易想到性の判断の誤りについて (ア) 相違点1について 本件考案1と引用考案1との間には,前記第2の3?ウ(ア)のとおり,「気体」,「気体発生機構」及び「装置」が,本件考案1においては,それぞれ「水素ガス」,「水素発生機構」及び「気体溶解装置」であるのに対し,引用考案1においては,それぞれ「水素ガスと酸素ガス」 「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生 ,させる電解槽」及び「微細気泡発生装置」であって,「前記加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の受水槽」を有するという相違点1が存在することが認められ,この点につき当事者間に争いはない。
(イ) 「気体」「気体発生機構」及び「装置」について , まず,実用新案登録請求の範囲請求項1の記載によれば,本件考案1の「気体」は,発生させた上で加圧して液体に溶解させるものである。本件考案1の「気体溶解装置」は,「前記気体が水素であり,前記気体発生機構が,水素発生機構であることを特徴とする」ものであり,気体を液体に溶解させる装置を指す。
前記1のとおり,本件明細書には,@水素ガスの摂取は,病気予防や健康増進といった有用な効果を奏し,他の気体の摂取も,それぞれに特有の上記効果を奏することから,水素等の気体を液体に溶解する種々の手段が公開されてきたが,従来の技術には,水素水は得られるものの,気体を過飽和の状態で液体に溶解させてその 18 過飽和の状態を安定に維持できなかったために水素水の濃度が低く,十分な効果が得られるものでなかった,設備が大がかりなものであったことなどから,ウォーターサーバーに容易に取り付けることができないなどの問題点があったこと(【0007】〜【0014】 ,A本件考案1は,これらの問題点を解決し,気体を過飽和 )の状態で液体に溶解させるとともにその過飽和の状態を安定的に維持することができ,さらに,ウォーターサーバー等に容易に取り付けることができる気体溶解装置の提供を目的とすること(【0015】)が記載されている。水素水に水素以外の気体が混在することは従来技術の問題点として指摘されておらず,水素以外の気体の排除は,本件考案1の目的とされていない。したがって,本件考案1の気体溶解装置は,水素を過飽和の状態で液体に溶解させるとともにその過飽和の状態を安定に維持することができれば足り,水素以外の気体を排除して,水素のみを液体に溶解させることまでは要しないということができる。よって,本件考案1の「前記気体が水素であり,前記気体発生機構が,水素発生機構であることを特徴とする」とは,「気体」を「水素」のみに,「気体発生機構」を「水素発生機構」のみに限定する趣旨ではないと解される。
他方,前記2?のとおり,引用考案1の「気体」は「水素ガスと酸素ガス」であり,「気体発生機構」は「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解槽」である。また,引用考案1の「微細気泡発生装置」は,「前記発生した水素ガスと酸素ガスと水との混合液を加圧しながら送液する加圧ポンプ」及び「水に対する前記水素ガスと酸素ガスの溶解度を高める加圧溶解タンク」を構成に含み,「加圧溶解タンク」において「水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水」が得られる。
よって,引用考案1の「微細気泡発生装置」は,水素ガスと酸素ガスという気体を水という液体に溶解させるものということができる。
そうすると,@発生させた上で加圧して液体に溶解させる「気体」につき,本件考案1においては「水素」(水素ガス)であるのに対し,引用考案1においては「水素ガスと酸素ガス」であること,A「気体発生機構」につき,本件考案1にお 19 いては「水素発生機構」であるのに対し,引用考案1においては「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解槽」であること,B「装置」につき,本件考案1は「気体溶解装置」であるのに対し,引用考案1は「微細気泡発生装置」であることは,いずれも実質的に相違するものとはいえない。
(ウ) 受水槽について 前記2?のとおり,引用考案1の「前記加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の受水槽」は,加圧溶解タンクにおいて水素ガスと酸素ガスを水と混合させたものに加圧することによって得られた水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を,絞り機構を通して急減圧した後に,加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の環境内に開放することにより微細気泡を発生させるための容器である。すなわち,上記受水槽は,後記イ(イ)のとおり微細気泡を発生させるために必須の機構である絞り機構と共に,水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水から微細気泡を発生させるものである。そして,引用考案1は,微細気泡を発生させてガスの溶解を促進させるとともに,微細気泡をそのまま利用することによって微細気泡の浮上促進や気液洗浄効果を引き出すことを目的とするものであるから(【0014】 ,当業者において,上記のとおり微 )細気泡を発生させるために必須の機構である絞り機構と共に微細気泡を発生させるものである受水槽を取り除くことを動機付けられるとは考え難い。
(エ) 原告の主張について 原告は,水素水を効率的に製造することは,本件出願当時において周知の技術的課題であり,引用考案1の構成のうち「絞り機構」と「受水槽」は,上記技術的課題の解決に必要なものということはできず,引用考案1の構成のうち上記技術的課題の解決に必要な構成,すなわち,引用考案1の構成から「絞り機構」と「受水槽」を取り除いた構成は,本件考案1の構成から引用考案1の絞り機構に相当する降圧機構を取り除いたものと実質的に同一であり,したがって,相違点1は,実質的な相違点とはいえない旨主張する。
しかし,前記(ウ)のとおり,微細気泡を発生させてこれを利用することを目的と 20 する引用考案1につき,当業者において,微細気泡を発生させるために必須の構成である絞り機構及びこれと共に微細気泡を発生させる受水槽を取り除くことを動機付けられるとは考え難い。
(オ) 小括 したがって,当業者は,相違点1に係る本件考案1の構成をきわめて容易考案をすることができたとはいえない。
イ 相違点2に係る容易想到性の判断の誤りについて (ア) 相違点2について 本件考案1と引用考案1との間には,前記第2の3?ウ(イ)のとおり,「降圧機構」が,本件考案1においては,「前記液体が細管を流れることで降圧する降圧機構」であって,「前記細管の内径が,1.0mmより大きく5.0mm以下」であるのに対し,引用考案1においては,「前記水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を減圧する絞り機構」であるという相違点2が存在することが認められ,この点につき当事者間に争いはない。
(イ) 引用考案1と引用考案2との組合せについて a 前記2?のとおり,引用考案1は,微細気泡を発生させてガスの溶解を促進させるとともに,微細気泡をそのまま利用することによって微細気泡の浮上促進や気液洗浄効果を引き出すことを目的とするものであり(【0014】 ,電解槽にお )いて発生させた水素ガスと酸素ガスを加圧溶解タンク内において水に加圧溶解し,その液を急減圧する絞り機構を通して低圧容器側に送り出すことによって,水素ガスと酸素ガスの微細気泡を発生させる(【0017】【0020】)という微細気泡発生装置である。引用考案1においては,微細気泡を発生させるという目的の達成のために,水素ガスと酸素ガスを加圧溶解させた液を急減圧することが不可欠であり,絞り機構は必須の構成ということができる。
b 他方,前記2?のとおり,引用考案2は,気体を高濃度に溶解した気体溶解液を製造する気体溶解装置につき,密閉タンク内に液体と気体を供給して製造する 21 装置及び酸素を含有する気体と液体を加圧下において混合することにより液体中に気体を溶解させて高酸素濃度の気泡水を生成する装置のいずれについても,圧力の急激な低下で液体中に気泡が発生し,気体溶解量が減少することを問題として掲げ(【0003】〜【0006】 ,気泡の発生を防止して安定した高濃度の気体溶解 )液を得ることができる気体溶解装置の提供を目的とするものである(【0011】 。
)引用考案2は,@加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部と,A加圧溶解部において気体を溶解させた気体溶解液の圧力を流入側から流出側へ向かって順次大気圧まで減圧する減圧部を備えており(【0012】 ,減圧部は,加圧溶解部から気体 )溶解液を送り出す流路の一部として設けられ,気体溶解液の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであることから,内径2〜50mm程度の比較的大きい流路として形成されている(【0053】 。気体溶解液は,加圧溶 )解部内において高圧が加えられた状態にあるので,そのまま大気圧下にある外部に排出されると,急激な圧力低下によって気体溶解液中に気泡が発生して気体溶解量が減少するおそれなどがあるが(【0038】 ,気体溶解液の圧力を順次大気圧ま )で減圧する上記減圧部は,気体溶解液に気泡が発生することを防止して安定した高濃度の気体溶解液を提供することができる(【0013】【0030】。
) c 前記a及びbによれば,引用考案2の気体溶解装置は,引用考案1の微細気泡発生装置において微細気泡を発生させるという目的の達成に不可欠である水素ガスと酸素ガスを加圧溶解させた液の急減圧につき,気体溶解液中に気泡を発生させて気体溶解度を減少させるという問題があるものとして捉え,同問題を解決するために,加圧溶解部から気体溶解液を送り出す流路の一部として,気体溶解液の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する内径2〜50mm程度の減圧部を備えることによって気泡の発生を防止するというものである。
したがって,当業者が,引用考案1の微細気泡発生装置において,微細気泡の発生という目的の達成に不可欠な,水素ガスと酸素ガスを加圧溶解させた液の急減圧のために必須の構成である絞り機構に代えて,引用発明2の気体溶解装置において 22 気体溶解液の圧力を急減圧させないように順次大気圧まで減圧するために内径2〜50mm程度の流路として形成される減圧部を適用することを動機付けられるとは考え難い。よって,当業者において,引用考案1に引用考案2を組み合わせることは,動機付けを欠くというべきである。
(ウ) 原告の主張について a 原告は,水素水を製造する場合に水素が高い溶解度で溶解した水から気泡が発生しないような構成を要することは技術常識であるから,引用考案1に接した当業者において,気泡の発生を防ぐために,引用考案1の加圧溶解タンクの下流側に,絞り機構に代えて引用考案2の減圧部を設けることを動機付けられる旨主張する。
この点に関し,特許第5216996号公報(甲6)には,「従来,油圧回路などのように細い配管で液体を送給する際において,液体に溶存した気体の溶存率が大きい場合には,液体に加わっている圧力の変動にともなって気泡が発生することがある。この気泡は,液体の流通を阻害しやすく,振動や騒音の原因となったり,液体の送給障害や熱障害を発生させたりするおそれがある。そこで,油圧回路などでは,配管内に乗じた気泡を除去する気泡除去装置を別途設けたり,…している。」との記載があり(【0002】 ,特開平11-244677号公報(甲4)には, )「圧力調節計19によって設定される水素ガス圧力は…5kgf/cm 2Gを超えると水供給通路17内において水素ガスの気泡が発生し,水素溶解水中に気泡が存在することとなって所定の溶存水素濃度が得られず,また取り扱い上の面からも好ましくない。」との記載がある(【0027】。
) 他方,引用例1には,引用考案1のほか,微細気泡発生方法ないし微細気泡発生装置により製造される酸素ガスと水素ガスを含有することを特徴とする還元水に係る発明も記載されており(【請求項5】【請求項6】【0019】【0021】【0025】〜【0033】【0040】等),上記発明によって得られる酸素ガスと水素ガスが溶解した還元水については,「還元(マイナス)側の酸化還元電位の気泡混じりの水が得られたことから,還元力を必要とする洗浄の場合に効果が大きく,か 23 つ気泡を含むことからより大きな洗浄力が期待される。( 」【0049】)との記載がある。
また,特開2013-128882号公報(甲10)には,@液体を収容可能な容器11,A容器11の内部又は近傍に配置された反応槽12,B反応槽12の内部上方と容器11の内部下方とを連通している連通管13,C反応槽12の内部に配置された水素発生手段14及びD容器11の内部に配置された,下方から上昇してくる気体の上昇を規制する部材18を有する水素水製造装置が記載されている(【0010】【図1】〔別紙2参照〕 。上記公報記載の水素水製造装置においては, )@容器11に水19を注いだ上で,反応槽12の内部に配置された水素発生手段14から水素を発生させると,A連通管13により容器11の内部下方と連通されている以外は密閉構造とされる反応槽12の内部圧が増加し,連通管13を通じて容器11の下方に水素を送り込み,水19と溶解させる(【0012】【0017】 。
)また,B部材18は,下方から上昇してくる水素の上昇を規制するものであり,連通管13から水中に出て上昇する水素の泡17の少なくとも一部が部材18にぶつかり,その下にたまるなどして長時間水中に滞在することになり,水に溶解する水素の割合を増加させることができる(【0013】 。このような水素水製造装置を )構成する容器11,反応槽12及び連通管13に関し,「容器11及び後述する反応槽12,さらには後述する連通管13を,ガラスやPET等の透明な材料によって形成すると,水素が水素発生手段14から発生し,その泡17が連通管13を通って水中に出てくる様子を容器11の外から観察することができるので,利用者に臨場感を与えることができる。( 」【0011】)との記載がある。
これらの本件出願当時の公知文献の記載によれば,水素水を製造する際に気泡が発生することについては,液体の流通を阻害しやすい,水素溶解水中に存在すると所定の溶存水素濃度が得られなくなるなどの問題がある反面,洗浄力を高める,利用者に臨場感を与えるなどの利点もあるものということができる。したがって,本件出願当時において,水素水を製造する場合は常に水素が高い溶解度で溶解した水 24 から気泡が発生しないような構成が求められていたとまではいい難い。
よって,本件出願当時,水素水を製造する場合に上記構成を要することが技術常識であったとまでは認めるに足りないというべきである。
そして,引用例1には,微細気泡を発生させてガスの溶解を促進させるとともに,微細気泡をそのまま利用することによって微細気泡の浮上促進や気液洗浄効果を引き出すことを目的とするものであること(【0014】)が開示されているのであるから,引用考案1に接した当業者において,気泡の発生を防ぐことを考えるとはいい難い。また,前記(イ)のとおり,当業者が,引用考案1の微細気泡発生装置において,微細気泡の発生という目的の達成に不可欠な,水素ガスと酸素ガスを加圧溶解させた液の急減圧のために必須の構成である絞り機構に代えて,引用発明2の気体溶解装置において気体溶解液の圧力を急減圧させないように順次大気圧まで減圧するための減圧部を適用することを動機付けられるとは考えられない。
b 原告は,引用考案1における「前記水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を減圧する絞り機構」を,明らかに機能が異なる引用考案2の減圧部に置換する動機付けはなく,阻害要因がある旨の本件審決の判断につき,水素ガスが過飽和の状態で溶解した水素水を効率的に製造するという周知の技術的課題に直面していた本件出願当時の当業者において,引用例1に,加圧ポンプから供給された水素ガスと酸素ガスが混合された水を加圧溶解タンク内で加圧して水素ガスと酸素ガスの溶解度を高めることができる旨の記載があるにもかかわらず,技術文献としての引用例1を,上記水素水の製造方法を検討する上で役に立たないとして検討の対象から除外することはあり得ない,本件審決の前記判断は,引用例1及び2の明細書を,特許権の範囲を確定する役割を有しているのみで技術文献としての役割は有していないものと捉えて,記載された技術的課題に過度に拘泥するもので,失当であると主張する。
しかし,実用新案法3条2項該当性の判断は,「実用新案登録出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が」「実用新案登録出願前に日 25 本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された考案」(同条1項3号)等,同条1項各号に「掲げる考案に基いてきわめて容易考案をすることができた」か否かの判断である。そして,考案とは,自然法則を利用した技術的思想の創作をいうのであるから(同法2条1項),上記判断に当たっては,当該刊行物の記載にどのような技術的思想が表れているかを課題,課題解決手段,効果等の観点から具体的に検討し,その技術的思想に基づいてきわめて容易考案をすることができたか否かを検討すべきである。本件審決は,引用例1及び2の各記載の技術的思想を踏まえて前記判断をしたものと推認することができ,誤りはない。
(エ) 小括 したがって,当業者は,相違点2に係る本件考案1の構成をきわめて容易考案をすることができたとはいえない。
ウ 引用考案1に基づく容易想到性 以上によれば,当業者は,引用考案1から本件考案1をきわめて容易考案をすることができたとはいえない。
? 引用装置1に基づく容易想到性について ア 原告は,引用例1からは引用装置1をも認定することができ,本件考案1と引用装置1との間には,@「気体」及び「気体発生機構」が,本件考案1においては,それぞれ「水素ガス」「水素発生機構」であるのに対し,引用装置1において ,は,それぞれ「水素ガスと酸素ガス」「水を電解して水素ガスと酸素ガスとを発生 ,させる機構」であるという相違点1’及びA本件考案1は,気体を溶解した液体を降圧する降圧機構を備えているのに対し,引用装置1は,降圧機構を備えていないという相違点2’が存在するものの,@の相違点1’は,実質的な相違点ではなく,Aの相違点2’については,水素水を製造する場合に水素が高い溶解度で溶解した水から気泡が発生しないような構成を要することは技術常識であるから,引用装置1に接した当業者において,気泡の発生を防ぐために,加圧溶解タンク5の下流側に,引用例1記載の絞り機構6に代えて引用例2記載の減圧部4及び流路6を設け 26 ることを動機付けられ,相違点2’に係る本件考案1の構成をきわめて容易に想到し得た旨主張する。
イ しかし,たとえ引用例1から引用装置1を認定することができたとしても,以下の理由により,当業者は,少なくとも相違点2’に係る本件考案1の構成をきわめて容易に想到し得たとはいえない。
すなわち,前記?イ(ウ)aのとおり本件出願当時において原告主張の技術常識が存在したと認めるに足りない。そして,容易想到性の判断に当たっては,前記?イ(ウ)bのとおり,引用例1及び2の各記載に表れている技術的思想を検討し,その技術的思想に基づいてきわめて容易考案をすることができたか否かを検討すべきであるところ,引用例1には,発明の課題として,微細気泡を発生させてガスの溶解を促進させるとともに,微細気泡をそのまま利用することによって微細気泡の浮上促進や気液洗浄効果を引き出すことを目的とするものであること(【0014】)が記載されているのであるから,当業者において,気泡の発生を防ぐことを考えるとはいい難い。また,引用例2記載の減圧部4は,加圧溶解部3から気体溶解液を送り出す流路6の一部として設けられたものであり(【0053】 ,気体溶解液の )圧力を流入側から流出側へ向かって順次大気圧まで減圧することによって気泡の発生を防止するものである(【0013】【0030】。すなわち,流路6の一部とし )て設けられた減圧部4は,微細気泡を発生させるという引用例1記載の発明の課題とは反対に,気泡の発生を防止するものである。よって,当業者において,引用装置1に流路6の一部として設けられた減圧部4を設ける動機付けを欠くといわざるを得ない。
ウ 引用装置1に基づく容易想到性 以上によれば,当業者は,引用装置1から本件考案1をきわめて容易考案をすることができたとはいえない。
? 小括 したがって,本件考案1は,引用考案1及び引用装置1のいずれからもきわめて 27 容易に考案をすることができたものということはできない。よって,取消事由1は,理由がない。
4 取消事由2(本件考案2ないし8の容易想到性の判断の誤り)について @本件考案2は,本件考案1にさらに限定を付したもの,A本件考案3は,本件考案2にさらに限定を付したもの,B本件考案4は,本件考案3にさらに限定を付したもの,C本件考案5は,本件考案4にさらに限定を付したもの,D本件考案6は,本件考案5にさらに限定を付したもの,E本件考案7は,本件考案6にさらに限定を付したもの,F本件考案8は,本件考案7にさらに限定を付したものである。
したがって,本件考案2ないし8も,前記3と同様の理由により,引用考案1ないし引用装置1のいずれからもきわめて容易考案をすることができたものということはできない。よって,取消事由2は,理由がない。
5 結論 以上によれば,本件審決は結論において誤りはなく,原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 古河謙一
裁判官 鈴木わかな
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