• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 27年 (ワ) 23427号 損害賠償請求事件
東京都目黒区<以下略>
原告甲 東京都大田区<以下略>
被告株式会社リコー
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/09/09
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,1095万5800円及びこれに対する昭和56年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,実用新案登録第978602号に係る実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有していた原告が,被告による昭和50年8月から昭和56年6月13日までの間の 別紙イ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録,同ロ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録及び同ハ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録 記載の各製品(以下,それぞれを「イ号物件」,「ロ号物件」及び「ハ号物件」といい,これらを併せて「本件各物件」という。イ号物件,ロ号物件,ハ号物件は,それぞれ,被告の製造販売に係る複写機「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」,「リコーPPC900及びセンタースリッター」,「リコピーPL5000オート」に関するものである。)の製造販売が本件実用新案権の侵害を構成する旨主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金254億7106万円の一部である1095万5800 1 円(イ号物件の当初の73台,ロ号物件の当初の64台及びハ号物件の当初の14台についての実施料相当額)及びこれに対する不法行為の後である昭和56年6月14日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
当裁判所の判断
1 一件記録(関連事件の記録を含む。)及び当裁判所に顕著な事実を総合すれば,次の事実が認められる。
(1) 本件実用新案権の内容等 原告は,次の内容の本件実用新案権を有していた。
登 録 番 号 第978602号 考案の名称 カッター装置付きテープホルダー 出 願 日 昭和41年6月13日 出願公告日 昭和47年1月22日 登 録 日 昭和47年9月29日 存続期間満了日 昭和56年6月13日 実用新案登録請求の範囲 「巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し,該 引出口3には固定刃2と共に,引出したテープT類を剪断する可動刃4を回 動自在に設けたカツター装置付テープホルダーにおいて,操作摘み9を有す る可動刃4の緩挿軸8に幅裁断用切刃7を固着し,軸8と引出口3の間に一 対の案内ロール5,6を装架した構造。」 (2) 原被告間の訴訟の経緯等 ア 原告は,昭和53年以降,被告による複写機「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」,「リコーPPC900及びセンタースリッター」,「リコピーPL5000オート」の製造販売が本件実用新案権の侵害を構成する旨主張して,被告に対し,多数回にわたり,損害賠償請求又は不当利得返還請求の訴えを提起し 2 たが,これらについては,すべて,請求が棄却され,又は訴えが却下されてきた。
イ 原告は,平成13年,被告による昭和47年3月から昭和56年6月13日までの間の本件各物件(原告は,訴訟の対象を特定するに際し,本件訴訟とは異なる表現を用いたが,その内容は,実質的に同一である。)の製造販売が本件実用新案権の侵害を構成する旨主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金の一部である199万4200円及びこれに対する不法行為の後である昭和56年6月14日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴訟(当庁平成13年(ワ)第11935号 事件。以下「平成13年訴訟」という。)を当庁に提起した。
これについて,東京地方裁判所は,平成13年7月24日,平成13年訴訟に係る訴えは,請求棄却の判決が確定した事件と同一の紛争を蒸し返すものであって,信義則に反するというべきであり,しかも,平成13年訴訟と実質的に同内容の前訴について訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,平成13年訴訟が提起されたことからすれば,訴権の濫用に当たる不適法なものである旨判断して,同訴えを却下する判決をした。
原告は,同判決を不服として控訴を提起し,控訴審において,対象物件を特定する目録を,別紙イ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録,同ロ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録 及び同ハ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録に交換的に変更する旨主張したが,東京高等裁判所は,同年10月30日,控訴審での対象物件が第一審での対象物件と同一の製品であることは明らかであるとした上,同判決の上記判断を支持して,控訴を棄却する旨の判決をした。
さらに,原告は,同判決を不服として上告を提起したが,最高裁判所は,平成14年3月12日,上告を棄却する旨の決定をし,平成13年訴訟の第一審判決が確定した。
ウ 原告は,平成13年訴訟の後も,被告に対する損害賠償請求又は不当利得返 3 還請求の訴えを幾度かにわたり提起したが,いずれについても,請求が棄却され,又は訴えが却下されてきた。
エ 直近では,原告は,平成27年,被告による本件各物件の製造販売が本件実用新案権の侵害を構成する旨主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,被告が昭和50年7月から昭和56年6月13日までの間に製造販売した本件各物件の一部に係る実施料相当額合計1069万5800円の支払を求める訴訟(当庁平成27年(ワ)第43号事件。以下「前件訴訟」という。)を当庁に提起した。
これについて,東京地方裁判所は,平成27年3月26日,前件訴訟の対象である本件各物件と平成13年訴訟の対象物とは同一の製品であるから,前件訴訟に係る訴えは,実質的には平成13年訴訟等で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものというべきであり,金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは特段の事情がない限り信義則に反して許されないとする最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁の趣旨に照らすならば,原告が上記訴えを提起することは,信義則に反して許されない旨判断して,前件訴訟に係る訴えを却下する旨の判決をした。
原告は,同判決を不服として控訴を提起したが,知的財産高等裁判所は,平成27年8月4日,同判決の判断を支持して,控訴を棄却する旨の判決をした。
原告は,これに対して上告せず,前件訴訟の第一審判決は,同月19日に確定した。
オ 原告は,前件訴訟の第一審判決が確定した直後である 平成27年8月20日,本件訴訟(その概要は,前記第2のとおり。)を当庁に提起した。
2 上記1の事実関係に照らすと,本件訴えは,原被告間において,請求棄却の判決が確定した同一の紛争を蒸し返すものであって,信義則に反するのみならず,平成13年訴訟や前件訴訟について訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,これらと実質的に同内容の訴えを更に再び提起するものであって,訴権の濫用 4 に当たる不適法なものであることが明らかである。また,紛争の長年にわたる経緯など上記の事実関係をも考慮すると,本件訴えは,訴権の濫用に当たる不適法なものであるという不備について,これを補正することができないことも,明らかである(なお,権利侵害期間の終期〔本件実用新案権の存続期間の満了日〕に照らし,原告には,およそ法的保護に値する利益がないことが明らかである〔本件実用新案権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,除斥期間の経過により既に消滅し,不当利得返還請求権についても,時効により消滅したことが明らかである。〕。)。
以上によれば,本件訴えは,民事訴訟法140条に基づき,口頭弁論を経ないでこれを却下することが相当というべきである。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 鈴木千帆
裁判官 5
  • この表をプリントする